Pipette Vol.10
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4も始まります。ただ、日本の教育システムが、そのための力を子どもたちが身につけられるよう、きちんと機能しているのか、きわめて怪しいです。日本の学校システムや理念は、基本線は学歴です。何を学んできたかという学習歴ではないんです。あまり知られていませんが、日本の大学1年生の平均入学年齢は18歳ですが、国際的に言えば、こんな国はあまりない。ノルウェーだとなんと30歳。多くの国は22、23歳。高校を出てから、インターンシップをやったり、あるいは専門学校に行ってみたりして、「私はこれをやりたい」というのが決まってから大学の学部を決めたり、専門の技師になったりしていくのが世界では一般的ですね。以前、ぼくの娘がホームステイした家族が、娘の高3の受験直前に日本に来てくれたことがあったの。どこを受験するかと聞かれ「ある大学の外国語学部と、それから文学部と社会学部です」と言ったら、とんでもなく軽蔑されちゃった。「あなた、教育評論家でしょ?全然統一性がない。高校卒業のタイミングで、なんですぐに次の進路が見えるのですか」と。ぼくは絶句しました。苦しまぎれに「おっしゃるとおり。ぼくもそういうことは常々主張しているけれども日本の制度は違う」とか言って(笑)。―日本の社会の構造全体にかかわる問題。「大学に入学する前にどこかでちょっとの間、働いてみるかというわけにいかないし、日本で大学まで卒業し、就職するには、このシステムに一応乗っかってやるしかない」と説明したら、「あなたらしくない。それじゃ、日本の教育界をリードできない」とさんざん言われてしまいました(笑)。キャリアをデザインする―数年前、文科省もキャリア教育を大学でやりなさいと言いました。先生がゼミを持たれている法政大学の「キャリアデザイン学部」というのは?「生徒のキャリアデザインができる教師になる」という面と「自分のキャリアをデザインする」の両方の意味合いがあるんです。今から30年前だったら完全に成り立ちません。91年にバブルが崩壊し、山一証券など、大きな会社が次々に潰れていきましたね。大企業に「就社」できれば一生安泰という時代は終わってしまったんです。 そうした中で、自分の生き方をどうデザインすればいいのか、職業を通してどのように自己実現すればいいのかということに関して、日本全体が悩み始めた。この問題を学問的にも明らかにしなければいけない。実践的にも、教育的にも取り組む機関が必要じゃないかと、法政大学が日本で初めて立ち上げたんです。全部、ゼロからのスタート。―最近の国家資格合格者数では一番人数が多いのが看護師で、薬剤師、医師、理学療法士、作業療法士が続き、6番目が臨床検査技師(約3500名)となります。臨床検査技師は超音波を使って肝臓や頸動脈などを診たり、採血して、その検査をしたりします。がん診断につながる検査を担当したりもします。かなり専門的な領域を選んで学ぶわけですね。キャリアデザイン学部は、何になっていいかわからないって言う人が少なくありません。医学部に行って医師になるとか、どうしても弁護士になりたいから法学部に行くとか、家が土建業をやっているから建築科や土木に行くというのはわかりやすい。職業が自分の中でイメージされているでしょう。そういった意味では、入学時にもうすでに自分のキャリアをデザインできているんですね。人間観、患者観を身につける教育―18歳の入学時に職業を強く意識している学生もいます。親御さんが技師や看護師で「検査技師って、案外いいよ」とすすめられたと言う学生もいます。職業選択に結びつくような環境があったということでしょうね。でも、ここで大事なのは、入り口は学生によって千差万別かもしれないけれども、その中でやる授業は、1つは教養的な科目、もう1つは専門的、テクニカルなものですよね。その2つをどのようにリンクさせていくかだと思うんです。授業に哲学、あるいは教育学的な分野があったりする

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