Pipette Vol.11 Spring 2016
4/12

4んいろいろなことがわかりました。宮島 大学の研究室で脳細胞の研究をされておられたのかなと思っていましたが、地域の現場に出られて、疫学調査の中から課題を見つけられた。研究の原点と大きな視野がそこにある。それこそ社会運動家としての姿という気がしてなりませんね(笑)。浦上 いえいえ……(笑)。認知症への誤解宮島 認知症というのは、昔は痴呆症とか「うちのお父さん、少しボケてきたよ」とか、そういう言葉で言い表していたかと思いますが、認知症という概念ができてきた現在においても、社会の中には認知症に対する誤解があると思うのですが。浦上 病名が痴呆症から認知症になり、社会の受け止め方はだいぶ変わってきたとは思います。しかし、認知症は怖い病気、認知症は治らない病気、だから認知症の検査なんか受ける気にはならない、こんな誤解があります。また認知症の症状に関しても、徘徊をしたり、暴力行為をしたり、幻覚、妄想が出たりなど、そういう症状が認知症の特徴のように思われて、正しく病気が理解されていないというのは、やはり大きな課題だと思っています。認知症では中核症状と周辺症状が区別され、それぞれの症状への正しい対応が必要です。ご家族の適切なケアで周辺症状はかなり抑えることも可能です(安心ケア10か条p8)。宮島 家庭という視点で見ますと、認知症の患者さんがいると、そうとう負担に感じたり、いろいろ悩みがあると聞いています。現実問題としての影響がかなり大きいと思ってよろしいですか。浦上 はい。それは大きいと思います。家族の方が働いているような場合に、両親の介護をしなければならないということで、離職されてしまったり、有能な人材である方が仕事ができなくなってしまうということは、社会にとって大きな損失です。認知症の中核症状と周辺症状(反応性※)中核症状認知機能障害思考・推理・判断・適応・問題解決・見当識障害・判断力低下・記憶障害 ほか・失認・失行・言語障害(失語)・見当識障害・判断力低下・記憶障害周辺症状(反応性)・不安・抑うつ・興奮・徘徊・不眠・被害念慮・妄想中核症状の例記憶障害新しく経験したことを記憶にとめることが困難判断力低下計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する、判断することができなくなる見当識障害ここはどこで、今がいつなのか、わからなくなる状態※残存する神経機能が外界への反応として示す症状であるため、周辺症状(反応性)といいます。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 4

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です