Pipette Vol.11 Spring 2016
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●グッジョブ・技師のお仕事対 談浦上克哉宮島喜文5それから、家で面倒を見られないということで、施設に入らなければならない状況もあるわけです。患者さんご本人は、本当は自宅で一生を終えたいと思っているにもかかわらず、施設に入らなければいけないという問題もあります。認知症の3つの予防宮島 先生は同志とともに認知症予防のための学会を立ち上げられました。私ども臨床検査技師も、この学会参加者が少しずつ増えています。具体的にどういうことをどういうときに予防すべきだとお考えでしょうか。浦上 病気の予防というのは非常に広い概念で成り立っていまして、第一次予防、第二次予防、第三次予防と3つの予防があります。第一次予防は、病気を発症しないようにするということです。第二次予防は、早期発見・早期治療です。そして、第三次予防は、病気になった方の進行を少しでも緩やかにするというものです。私たちが立ち上げた日本認知症予防学会は、このもともとの概念に則ったすべての予防に対してアプローチしていくということです。もちろん、多くの方が認知症になりたくないと思っていますので、今は一次予防に一番力を入れていることには間違いないです。臨床検査を活用しよう宮島 臨床検査という視点で、この点は非常に大切だというものがありましたらお聞かせいただけませんか。浦上 認知症の診断や、治療効果の判定に必要な検査があまりなされないという現実が、残念ながらあります。それは、これまでの医療形態が大きく影響していると思うのです。認知症は、どちらかというと、精神科的な病気であると考えられていて、精神症状の評価にばかり力点が置かれていた歴史があります。しかし、実際には認知症というのは脳の器質的な病気です。また、私たちが「治療可能な認知症」といっている病気に関しては、普通の内科疾患も含まれているんです。ですから、そういった病気をまずはしっかり見つけて、「治療可能な認知症」、たとえば甲状腺機能低下症とかビタミンB11欠乏症のような病気を、血液検査を行って区別し、診断して除外していく必要があります。そして、治る病気を見つけたら、しっかり治療に結びつけていく必要があると思います。こういうのはすぐに検査できる内容ですし、またさらにアルツハイマー型認知症にしても、血管性認知症にしても、脳に実際に病変が起きているわけですから、その脳病変の評価をあらゆる面から確実にやる必要があると思います。とくに、今、私が重要だと思っているのは、血管病変の評価をもっと積極的にやるべきではないかということです。今の医療で認知症に関して、あまりそういうことがなされていないんです。ですから、臨床検査技師の方にもっと認知症に関わっていただきたいと思っているんです。宮島 血管性病変というのは非常に危険なところがありますから、客観的なデータを提供できる臨床検査の活用が必要だろうと思いますね。宮島会長

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