Pipette Vol.12 Summer 2016
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ゃんになろうと思っていました。それが学校づくりを手伝ってと言われたので、学校をつくるなら、ぼくとしての条件があったので、こう言いました。「森が校舎になります。森の中の学校に、鉄筋コンクリートの箱は興味ありません」。どんな学校をつくるかは町が決めることなんですが、「鉄筋コンクリートならやめます」ってはっきり言いました。とても大変でしたが、ようやく、今年の12月25日に、すばらしい学校ができ上がります。宮島 クリスマスに完成するんですね!ニコル そうです。子どもたちは正月が終わってから入ります。この5年の間、スタッフは子どもたちとずっとつき合っていましたから、われわれの生活の半分は東松島。子どもたちがここに来たり、ぼくたちがあっちに行ったりして、森と田んぼと川と海で、ずーっと学校をやってきているんです。宮島 子どもたちは1年1年と、そのような自然の中で、自然の力を得て、大きく成長していっているのですね。花火はいけませんニコル 私の中では子どもを助けているというよりは、子どもたちに助けられているというほうが大きいのです。じつは、私の胸の中には恐怖があったんです。私は花火が大嫌いです。日本人は「花火、花火」って喜ぶでしょ。ぼくは大人だし、武道の有段者でもあるのに、花火はいけません(笑)。それは、ドイツが爆弾を落としていったときの音を今もはっきり覚えているからです。それから狭いところに入れられるのも嫌いです。戦争で、ウーウーウーと空襲警報が鳴って庭先の防空壕の中に隠れて、ロウソクを立てて、外ではボン!ボン!ボン!と爆弾が落ちる音がする。狭いところでおばさんにぎゅーっと抱かれて。だから花火は嫌い(笑)。忘れようと思っても忘れられない。しかし、怖い理由がわかったら超えられました。花火が見られるようになりました。もう大丈夫です。ぼくは、震災を経験した子どもたちの勇気を見て、超えられました。宮島 人間というのは、小さなことでも、経験して怖かったこと、つらかったことをいつまでも覚えているし、根底では存在し続けているわけですね。ですから、新しく何かが起こるとか、人との出会いがあるとか、そういうことによって乗り越えられる。ニコル そうです。森はやさしいんです。怖いことなんてまったくないんです。写真左:「森の学校」にいち早くつくられたツリーハウスは、子どもたちの歓声が絶えない(アファン財団提供)写真右上下:「森の学校」イメージ図(東松山市提供)

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