Pipette Vol.12 Summer 2016
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6も流れてしまうし、キノコも生えない。草花も生えない。ニコル 震災のあとで、警察官とか看護師とかお医者さんが人を助けに行くでしょ。とてもストレスがかかります。その人たちを誰が助けるんですか。このことがとても気になります。では、どうすればいいか?このすばらしい自然を生かしたらいいではないですか。今、聞こえているのはカエルと虫、それからキツツキとウグイスですね。人間の心には、音がものすごく大事です。騒音になる音はストレスですが、この自然の音は、まったくストレスになりません。夜になったら、この森の中で焚き火をします。焚き火の炎を見ると、5分以内に、人間の脳はα状態になります。そうすると話ができるようになります。もちろん話さなくてもいいし、話してもいい。それから、小川の音を聞くだけで、小川が笑っている、川が動いている。だから酸素が混ざっている。小川の音がすると、「あっ、ここに飲み水がある!」。いつでも冷たい飲み水があるだけでホッとする。これはわれわれの遺伝子の中にある安らぎなのです。技術、機械、薬はほんとうにありがたい。でも、最後の癒やしは自然です。宮島 今、利便性や効率性ばかりが追及されますが、大切なものを忘れてしまい、知らず知らずのうちにストレスを感じていることが大いにあります。自然の中では、人は小さいですが、人が自然と一体になると大きくなります。そして、心も豊かになります。そういう意味では、森に来ると人間の持っている五感すべてが、少しずつ刺激を受けて、そして研ぎ澄まされて、だんだんと癒やされていくのでしょうね。ニコル ぼくは、子どもたちに「生きるってなんですか」って語りかけてみました。自分の足元を2、3分見ながら、一生懸命生きているものを見たり、目には見えない生き物もいっぱいいることを知ってもらいます。まわりでウグイスが鳴いて、カエルが鳴いていますけど、彼らにも生きる権利があるんです。彼らが生きているから、ぼくたちはありがたく生きているなって。ぼくは義務教育を受けてない日本人ですけど(笑)、立派な日本人と会話ができるというのはすばらしいと思っています。宮島 私は立派じゃありませんけれど(笑)。生き方の教育というのは、覚えるとか計算するのとは違いますね。感じるところから始まるのではないでしょうか。私たち検査技師の場合も、その人がどう思っているか、患者さんはどう思っているか、ということにより近づかなければいけない時代になってきています。技術が進歩して、機械だけで検査業務をする、データだけで判断する、そういう仕事のやり方が主体になりつつあったのですが、今、それを見直そうと考えています。患者さんと向き合って、どんな話をすれば理解してもらえるのか、また、患者さんがどういった訴えをされているのかをきちんと受け止めよう、そういう時代に入っていると思っています。技術、機械、薬はほんとうにありがたい。でも、最後の癒しは自然です

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