Pipette Vol.13 Autumn
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6頑張るレールから一度外れてみるたとえば車の場合、ガソリンを満タンにして、「よし、あそこまで行こう」と決めて走り出します。でも、頑張って走り過ぎちゃうと、目的地に到達する前にガソリンがなくなってしまって、もう、これ以上は進めないということになる。これは、目標を持っている人によくありがちなことで、私も経験しましたけれど、目標に到達する前になぜかやる気がなくなってしまう、馬力がなくなってしまうんです。エネルギーがなくなるまで頑張るのではなく、頑張るレールに乗って走りながらも、必ずどこかで充電できる、リラックスできる場所をつくりなさいと言っているのです。レールから一回外れて、自分が心から楽しめることをやるんです。心から楽しめることをやることで、脳みそも体も目標に向かっているところから、一回、離れられて、すごくリフレッシュできるんです。そこでもう一回、脳も体も満タンにして、頑張るレールに戻って走り出すんです。そして、また切れる前にどこかで充電して、また戻って走り出すことを繰り返して、最後には、十分に充電してから一気に目標に到達するのです。休みだから寝ている、これでは駄目です。家の中で休んでいるくらいでは、そんなにリラックスできません。楽しいなあと思うことをやらなければ駄目なんです。ぼくはキャンピングカーを持っているので、キャンピングカーでどこかに行って、好きなDVDを見たりします。今はサービスエリアでおいしいものが買えるので、それを買い込んで、好きなDVDを見ながらくつろいだり、近くの神社に寄ってお参りして帰ってきたり……。ぼくは、自分がほんとうに好きなことをやる時間を、必ずどこかに入れています。これはスポーツに限らず、社会人の人たちもやられたらいいと思います。頑張ることは当たり前、だからこそ、楽しめる時間をつくったほうがいい、これをアドバイスとして言いたいですね。―リフレッシュまで計画的にやっていらっしゃるということですね。目標をきちんと立てるところからまったくブレていないということに、私はびっくりしました。逆の人が多いですよね。「どれだけ休むんだよ」という人がいますからね(笑)。―耳の痛いところがありますけれども(笑)。だから、逆算してちゃんと計画しておかないと……。目標を達成するためには、絶対的な準備が必要なわけです。オリンピックで金メダルを取りたい選手が、「気持ちが乗ったときだけ練習します」では、絶対に取れるわけがないですからね。人が育つ原理編弱い自分から強い自分へ問いかける―先生はオリンピック選手の指導もされていて、2004年のアテネ五輪の金メダリスト谷本歩実さんのコーチとして、独特の指導法で育て上げたとお聞きしています。「自分の頭で考えるノート」ですね。まず、スタートラインを決めます。そして、スタートラインに立って、一緒に走り出しますが、走り出す目的を決めます。谷本歩実のときは、お互いに自分がどうなりたいかを話し合いました。谷本は「オリンピックで金メダルを取ることが私の夢です」と。「わかった。おれの夢はおまえに金メダルを取らせることだ」と。このように確認してからスタートしたんです。でも、途中で、彼女がほかの大会で負けたりすると、「負けたから、私はもう駄目だ」と落ち込んで、練習もやる気が出ない、人と接するのも嫌だなどと、いろいろなことが起こります。そういう彼女を見たら、普通であれば、「もっとやれ」とか、「頑張れよ」と言いますけれど、そのときのぼくが言った言葉は、「落ち込んでいてもいいよ。いいけれども、おれはおれの夢を絶対に諦めないから」。そう言ったのは、「負けても見放されてい

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