Pipette Vol.16 Summer 2017
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11在宅医療で実践している取り組み採血、心電図、超音波、尿検査といった検査から、小型化した医療機器、家族管理する医療機器の操作説明にいたるまで、臨床検査技師の専門性を生かして、在宅医療に貢献している。看護師と訪問診療を行う在宅医療のスタイルは多いが、文京根津クリニックでは臨床検査技師が医師に同行することで、自宅における診察に、各種検査を取り入れることができるようになった。在宅の現場で臨床検査技師が仕事するまでの経緯文京根津クリニックでも、当初から臨床検査技師を採用していたわけではない。全国的にも、在宅領域を志望する看護師は不足している傾向にあり、その例にもれず看護師がなかなか見つからなかった。点滴や各種処置は、訪問看護ステーションに依頼することで対応が可能となるため、訪問診療において看護職に代わる職種はと考えたとき、臨床検査技師が対応できるのではと、採用にシフトしていった。基本的には、文京根津クリニックの臨床検査技師は医師に同行することで、医師の介助者としての診療補助、患者家族との仲介人、医療機関との連携役を担っている。在宅の検査はどうしても病院に比べて、偶然誤差、経年誤差が起こりやすい傾向にある。そのような中、臨床検査技師が同行することで、投薬状況や患者の状態をふまえて、医師に検査報告ができる。また、例えば、採血指示が出た際、「前回と同じ項目でいいのか。ワーファリンを使っているためAPTTやPTといった凝固系の検査も追加すべきか」というように、検査項目の提案もしている。臨床検査技師も在宅医療チームの一員として積極的に関わっているのである。患者・医師からの取り組みへの評価在宅医療というものは自宅で行う以上、設備の整った外来診療よりも制限が多く、従来は来院してもらわなければできない医療行為が多かった。しかし、近年では機器の小型化や在宅でも使える薬剤の増加に伴い、在宅でも幅広い医療が行えるようになってきている。患者に急変が起きた際、臨床検査技師がいれば迅速に検査ができ、速やかに適切な治療の選択が可能になる。在宅医療分野での臨床検査技師の必要性は、まさにこの点にあると考えられる。在宅医療の現場で活躍する臨床検査技師 [クリニック編]医療法人社団 杏生会 文京根津クリニック(東京都)臨床検査技師1名、医師1名、運転手1名で1組とし、2組が10~15宅/日を巡回し訪問診療を行っている。診療科目:老年内科・ 内科クリニックの特徴年間3000回以上の往診・訪問診療を行う在宅医療専門クリニック。文京区を中心に、荒川区、台東区、北区、豊島区の一部、足立区の一部などの周辺地区を診療範囲としている。

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