Pipette Vol.17 Autumn 2017
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11在宅医療で実践している取り組み要支援高齢者等を対象に、県職員(県立遠野病院)、市職員及び民間(社会福祉協議会)と三者が連携して、在宅患者や介助者のQOL向上を目的に、訪問診療・訪問服薬指導・訪問リハビリ・介護指導を実施している。臨床検査技師はポータブルにて心電図などを行い、医師とその場で検査結果の確認をすることで、治療の初動が早まり、対象者の健康管理継続に役立てられている。また、持ち帰った採血検体の検査結果は、地域ケアカンファレンスで共有され、その後の対応とQOL改善に向けて活かされている。在宅の現場で臨床検査技師が仕事するまでの経緯「病院の外来機能を、会計も薬局も全部丸ごと出前する」という考えのもと、1985年に当時の副院長を中心として診察と検査から始めた在宅医療が開始された。在宅医療は地域の風土などにより大きく医療ニーズが違うこともあり、遠野病院では継続しながらも改善を繰り返し、その過程のなかで訪問リハビリや訪問看護、ヘルパーが取り入れられることとなった。現在は介護保険制度とほぼ同じような形態となり、介護保険の原型ともいえる〝遠野方式在宅ケアシステム〟として、対象患者の自宅を在宅に関わるスタッフとともに訪問し、診察・検査を行い、同時に、介護環境や家族の状況についても改善が必要か確認をしている。患者・医師からの取り組みへの評価遠野市は東京23区よりも広い面積があり、冬季はマイナス20度近くになることもある。さらに、すでに超高齢化の中にある。病院の方針・方向性はこれらを踏まえ、地域における立ち位置とその役割を認識することなどで決定される。そして、それぞれの連携部門(多職種)がどのように動くべきかが見えてくる。臨床検査部門も同様である。今後、ますます少子高齢化が進む状況は明らかで、行政も医療も大きな転換期を迎えているが、臨床検査も例外ではない。個別の問題も多々あるものと思われるが、検査内、院内にとどまらずに、能動的に地域に出て、医療のみならず介護・福祉を含めた多職種との関わりを持つことで、患者さんのQOL向上のため、臨床検査の新たなニーズ開拓と提案を期待したい。在宅医療の現場で活躍する臨床検査技師 [病院編]岩手県立遠野病院(岩手県)訪問スタッフは県立遠野病院の臨床検査技師、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、診療放射線技師の他、遠野市役所長寿課の保健師と遠野市社会福祉協議会訪問看護ステーションの看護師が遠野市職員の運転する1台のワゴン車に乗り組み、月に1回巡回し訪問診療を行っている。診療科目:内科、消化器科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、神経内科病院の特徴病床数:一般病床177床、結核病床20床、感染病床2床、計199床。訪問先は県立遠野病院に主治医がいる在宅寝たきり患者等を対象としており、市街地から離れた町を含め、遠野市全域を診療対象としている。

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