Pipette Vol.20 Summer 2018
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6医療関係者にも癒しを―最近はTVでナレーションを担当されることも多いですね。NHKでは15年くらいになります。でも不思議なのは、NHKのスタッフとも話しているのですが、ファンですと言ってくださる方に医療関係者が多いんです。なぜでしょうか。―語り口が優しくて癒し系だから?歴史とか動物の番組なんですけどね。たぶん皆さんはミスの許されない世界で生きておられる。うまくできて褒められるよりも、ミスして怒られる恐怖もあるから、大きなストレスがある。だから癒されることを望まれているのかもしれませんね。病院はどこかしら弱っている方が来ますから、毎日、病いという「気」と接するお仕事って本当に大変ですよね。オンとオフの時間の切り替えをうまくやる必要がある。そのためにも芝居をもっと観ていただきたいです(笑)。お客様が普段の仕事や生活を忘れられる一番はいい芝居です。架空の世界で泣いたり笑ったりできますからね。神様がくれたプレゼント―今回は1日限りの「ものがたり朗読 いまさらふたりで 徹と郁恵のてづくりライブ」という公演(平成29年11月28日)をされます。妻が子育て時に、絵本の会で読み聞かせをした経験から、長年、いつか絵本朗読のイベントをしたいと希望していたんです。僕の命を救い、支えてくれた妻に感謝し、結婚30年のけじめとして行うことを決めました。自宅を稽古場がわりに、毎夜遅くまで二人で準備しているので、それこそオンとオフがなくて大変です(笑)。―演出は同じ文学座の方ですね。日本で1、2という注目の演出家にお願いしました。読み聞かせの主役は絵本ですが、お客様にいろいろな形で楽しんでいただく企画としています。―今、朗読は静かなブームです。言葉っていうのは、人を笑わせたり泣かせたりできる、神様がくれた最高のプレゼントです。言葉は愛にもなるし武器にだってなります。文学座は文学者が作った劇団なので、言葉ありきの劇団です。先輩に言われたのも相手に言葉を渡す、相手の言葉を聴くということです。僕は、ナレーションの仕事もとても大事にしているのですが、言葉だけしか使えず自分の力量が問われるからです。「はい、次はこの検査をしましょうね」と、皆さんのお仕事でも言葉はとても大切でしょう?インタビューを終えてご夫婦の絆のあり方を教えていただくとともに、専門職の自分が人として成長していかなくてはという思いを強くしました。(取材 平成29年11月19日)      *次回は、『声に出して読みたい日本語』の大ベストセラーでも有名な齋藤孝・明治大学教授をお迎えします。コミュニケーション能力の鍛え方についてのお話を含め、どうぞお楽しみに。渡辺 徹Toru Watanabeり出る大ヒット。現在も文学座に所属し、舞台を中心に活躍しながらドラマ、映画、バラエティ、司会、ナレーション、さらに2014年からは淑徳大学客員教授として教鞭をとるなど活動の場は多岐に渡る。最近の主な出演作に、NHK『地球ドラマチック』ナレーション、文化放送『渡辺徹 家族の時間』メインパーソナリティーの他、舞台『国民の映画』、『ゲゲゲの女房』、『ヘンリー6世』、『トロイラスとクレシダ』、『VOICARION Ⅱ』、『お笑いライブ 徹☆座3』、映画『リンキング・ラブ LINKING LOVE』など他多数。プロフィール●茨城県出身。1980年に文学座研究所に入所。1985年、座員となる。1981年、テレビドラマ『太陽にほえろ!』でデビュー。1982年に「彼(ライバル)」で歌手デビュー。第2弾シングル「約束」はベストテン番組の第1位に躍

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