Pipette Vol.22 Winter 2019
3/12

●グッジョブ・技師のお仕事ゲスト 五郎丸 歩3したし、試合前には「できる」という確信に変わって試合に臨めました。だから偶然の勝利ではないと。―世界に勝てるという点で、最初は懐疑的だったわけですね。2019年に日本でワールドカップが開催されることは当時決まっていましたが、国内での盛り上がりが今一歩だったので、我々にとって2015年のワールドカップは、この状況を改善する最後のチャンスでした。一番わかりやすい形として、南アフリカ代表に勝てたというのは大きかったですね。エディージャパンに選ばれてこそ達成できたことですが、小さいときから、世界で勝つことは無理なんだろうなあと思っていました。こうした結果を残せて、「不可能なことって一つもないんだな」って感じています。ようやく世界に出ていく選手が増えてきたり、世界からも日本ラグビーを注目してもらえる状況になっていますが、「今、道がないところに道をつくっていく」という面白みがラグビーにはありますね。―ワールドカップ2015では大会ベストフィフティーンに選ばれ、エディーも「スーパースターになった」と評した五郎丸さんですが、エディージャパンに入る前と後では、肉体面でどのような変化がありましたか。2012年にチームとしてかなり走り込んだんです。そのときは94キロぐらいまで体重が落ちました。ワールドカップがあった2015年に向けてしっかりと身体をつくって100キロまで上げました。今も体重は100キロをキープしています。「五郎丸ポーズ」からの進化―2015年には流行語大賞にもノミネートされた「五郎丸ポーズ」。正確にはプレ・パフォーマンス・ルーティンという位置付けのボールを蹴る前の動作ですね。エディーが招いたメンタルコーチの荒木香織さんと一緒につくり上げたルーティンでしょうか。メンタルコーチとつくったというものではありません。大学時代を含めて、もともとやっていたものを数値化したりして、細かい作業に入ったのは荒木メンタルコーチとともにということですね。―このルーティンの目的は大学時代から変わらず一緒ですか。大学のときは漠然とやっていた側面があります。荒木さんと一緒に、目的をクリアにしたり、自分の動作行動を細部まで時間で割っていったりしたということですね。―最近の試合では「五郎丸ポーズ」はされませんね。「なんでやめちゃったの」とよく言われるのですが(笑)。理由は、〝レベルアップしたいから〟です。エディーからは、キック成功率は85%を出しなさいとずっと言われていましたし、個人的にも80%は超えたいと考えていました。日本のトップリーグでベストキッカー賞を取ってきましたが、ずっと80%を超えることはできませんでした。―2017~2018シーズンでもベストキッカーでしたね。昨年はポーズをせずにキック成功率は83%でした。やっと自分の中の目標を超えることができたわけです。ワールドカップに向けてあれだけ自分の中で整理して取り組んでも80%が達成できなかったので、何か変えないといけないなという思いがありました。いわゆる「五郎丸ポーズ」をやめたというよりは、キックまでの動作を〝よりシンプルにしている〟というのが正しいです。―試合によって、蹴る位置や距離もまちまちです。それでもキック成功率にこだわるわけですね。やはり数値というのは追いやすいですかラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」荒木 香織著(講談社+α新書)「アスリートはもともとメンタルが強いのでは」そう思っている方も多いと思います。でも、決してそんなことはありません。(略)メンタルは鍛えることができるのです。その意味でメンタルはスキルなのです。

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る