Pipette Vol.22 Winter 2019
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4ら。試合では風が吹いたり雨が降ったり、いろいろなコンディションがありますけど、数字はうそをつきません。だからこそ、キック成功率にコミットしていくのは面白みでもあります。日本代表としての誇り―私は学生時代の五郎丸さんの試合も観ているのですが、試合前のストレッチにしても、一人離れてやっていて、とても冷静な選手というイメージがあります。しかし、南アフリカ戦のキックオフ直前、そのように冷静沈着な五郎丸さんが、君が代斉唱で目が赤かったというのは有名な話です。感極まったということでしょうか。今までラグビーをしてきて、あれだけの感情を表に出すことはなかったです。それくらい、日の丸を背合う重みとか、ただ勝つだけではなく、2019年のワールドカップにつなげなければいけないとか、いろいろな思いがある中で、高まる感情がありました。エディージャパンというチームは、とてもハードなトレーニングの4年間でした。しかし、それをしたメンバー全員が試合の場に来られたわけではありません。怪我や選考で代表として来られなかった選手たちが、僕らの試合の前に、ビデオレターとして思いを届けてくれました。そうしたことも重なりましたね。―「最初にみんなで(君が代を)歌おうと言ったのは五郎かな」と元日本代表主将の菊谷崇さんが言っていますが。そうですか?覚えていないですけど。「かな」でしょう(笑)。ラグビーは、国籍が違っても条件を満たせば日本代表になれるというのが他の競技との大きな違いです。2005年に19歳で僕は日本代表に入ったのですが、外国人選手が多くて、ヘッドコーチも外国人ですから、英語でやりとりしている。通訳を介しても伝わらない歯がゆさもあり、「ここは一体どこの代表なんだ」(笑)と。同じジャージを着て日の丸を背負うなら、やはり国歌の意味や歌詞などは最低限覚えておかないと、日本代表とは呼びにくいと。勝つためのラグビー―実は私(土居)も長年ラグビーをしていまして、おととし、赤パン(60歳代の選手)になったんですが、今も2カ月に1回くらいは、大阪や東京で定期戦をしています。 五郎丸さんが南アフリカ戦で右隅にトライを決めて、思い切り芝を叩かれていましたが、あの気持ちは感覚的によくわかります。試合の終了直前に日本の逆転トライとなったとき、私たちオールドファンで泣いていないのは一人もいなかったと思います。それまでの日本代表も、ラストの20分くらい前まではいい試合をしていたんですが、ラスト20分で点差を離されるというのが大きな欠点でした。そこを変えるために、我々は1日に4回も5回もピッチに立ったり、厳しいウェイトトレーニングをしたり、外国の選手が寝ている時間に、自分たちは起きてトレーニングをしたりして、自信をつけていきました。他人が動いていない時間に動くという、ある意味で単純な考えですけれども、4年間それをやり通したわけです。―エディーが打ち出した「ジャパン・ウェイ」という戦略は、日本人らしさを徹底的に活かしたプレースタイルやトレーニング方法、マインドセット(心構え)など、世界に勝てるラグビーのためでした。低い位置でのプレーとスピードの維持は、「試合60分(4分の3)を過ぎてからの効果」が目的とされています。ラスト20分の戦い方を変える、と。どこのチームでもラスト20分というのは、体力は落ちるんです。それほど過酷な時間帯なのですが、そこでもうひとつギア ラグビーでは、外国人が国籍を超えて、その国の代表になることができます。 その条件とは、①出生地がその国である、②両親、祖父母のうち1人がその国出身である、③その国で3年以上、継続して居住している、のいずれか1つを満たすこと。ただし、シニアで代表国を選んで以降の変更は認められません。 なお、2020年から、③の居住年数が5年以上に見直されます。ラグビー豆知識2 外国人も代表になれる

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