Pipette Vol.23 Spring 2019
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●グッジョブ・技師のお仕事ゲスト 荒木 由美子3認知症に気づく―認知症は、今後の日本のもっとも大きな課題です。荒木さんのようにこれまで介護をされた方の実体験を、社会の多くの方に知っていただくことがとても重要だと思っています。認知症にはどう向き合うべきとお考えでしょうか。まずは認知症をどのように気づいてあげればいいのかという点です。若年性認知症もあるくらいですから、年齢順の発症ではないですし、それまでの生活スタイルで何か表現が変わってきた、生活の仕方が変わってきたということに気づく。さらに認知症のなり始めはとてもイライラし、とげとげしくなりがちになる人もいます。性別や年齢によっては更年期なの?と思われたりもします。何か生活上の表現が変わってきたら、病院に連れていくようにしようと、家族の中で合意していくことは有効です。ひょっとしたらという段階での検査受診ですね。一緒に住んでいると「まさか我が家の家族がそうなるはずがない」と思いたがるので、そうしたことさえ拒否してしまう。まずは気づいてあげることですね。―おかしいまでではなくても、ちょっと違うということも気づいてあげる。前提として、相談しやすい主治医の先生を作っておくこと、家族で話し合える環境を作ることが大切ですね。糖尿病の認知症リスク―義母さまは糖尿病だったのですね。結婚して2週間後に、血栓ができて義母が入院したときの検査で、糖尿病、高血圧、心臓肥大という成人病であることがわかりました。本人は不整脈があるくらいという認識でしたから、「えっ、私、糖尿病なの?」という反応でした。義母は、実は10年前から糖尿病だったという診断でしたし、家族全員がそのときに、なかなか治らない病気なんだという理解をしました。義母は(インシュリンの)自己注射はいやだと言いましたので、お薬を飲んで、定期的に入院する生活になりました。自宅では、カロリーコントロールが私の担当です。無理強いもできませんから、脂あぶらものや甘いものもたまには目をつぶったりしましたが、私と義母の関係も悪くなりがちなので、そういう意味で3、4カ月に一度の定期入院は、義母も心が穏やかになり、家族側の心のコントロールになりました。そうする中で、糖尿病の合併症などの知識も得ました。―その後に認知症の気づきがあった。最初は「ご飯食べていない」とか「お金が無い」とかでした。そのうちに「ご飯を食べさせてくれない」「お金を取られた」という形で私への攻撃に変わりました。宅配業者の方が「由美子の彼氏」となり、受け取った荷物を義母に見せると「男がせっせと、こんなおいしいものを由美子に運んでいる」と言われました。義母からすれば孫である息子を見ても、「由美ちゃんの若い彼氏が毎日ここに住むようになった」という表現に変わっていきました。―糖尿病の治療開始から認知症の発症までの期間はどのくらい?あっという間だったと思います。当時はボケ症状という扱いでしたが、血栓もあったので、血液の流れが影響しているのでは

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