Pipette Vol.24 Summer 2019
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◆栄養とは わたしたちの体は糖質(炭水化物)、タンパク質(アミノ酸)、脂質、ミネラル(電解質、微量元素)、ビタミンの5大栄養素を、日頃、食事から摂取して生命活動を維持しています。栄養素には、「身体の構成成分」「エネルギー源」「身体の機能調節」の3つの大きな役割があります。低栄養状態が持続すると、栄養素の不足から筋蛋白の崩壊、内臓蛋白の喪失・不足、免疫能の低下、創傷治癒力の低下などを起こし健康が維持できなくなります。厚生労働省「日本人の食事摂取基準」の2015年版に続く2020年版(案)では、栄養に関連した身体・代謝機能の低下の回避の観点から、健康の保持・増進、生活習慣病の発症予防及び重症化予防に加え、高齢者の低栄養予防やフレイル予防も視野に入れて「健康寿命の延伸」につなげたいとされています。※フレイルとは、加齢に伴い筋力が衰え、疲れやすくなり家に閉じこもりがちになるなど、年齢を重ねたことで生じやすい衰え全般を指し、健常な状態から要介護状態になるまでの中間段階のことです。◆栄養の検査と栄養評価栄養素のそれぞれの物質や栄養素の分解に必要な酵素については、生化学的検査として体液(おもに血液、必要により髄液、胸水、尿など)に含まれる量を測定することができます。測定感度の向上により、微量分析が可能になっています。実際の栄養状態の評価は、客観的栄養指標であるタンパク質(アルブミン値を使用)、免疫(末梢血リンパ球数を使用)、脂質(総コレステロール値を使用)をスコア化し、それをもとに算出した値(CONUT値)や摂取されたタンパク質(アミノ酸)の含有窒素量と体外に排出された総窒素の差(窒素バランス)を使用する方法などが使用されています。◆ビタミン欠乏症の予防ビタミンCの欠乏状態が数週間から数か月続くと壊血症の症状が出現します。壊血症は出血性の障害が体内の各器官で生じる病気です。また、ビタミンB1の欠乏は心不全と末梢神経障害をきたします。心不全によって足のむくみ、神経障害によって足のしびれが起きることから、脚かっ気けとも呼ばれます。コロンブスによる大航海時代以降、長期間の外洋航海でこれらのビタミン欠乏症が発症し、乗組員の命を奪いました。鎖国をしていた日本でも、江戸時代に江戸を中心に白米を食べる習慣が広まり、白米がビタミンB1を含まないため、ビタミンB1欠乏症が流行しました。江戸から地方に戻ると玄米などからのビタミンB1摂取で快方に向かったため、脚気は原因不明の「江戸わずらい」と呼ばれていました。明治時代以降、徴兵令で白米食が特典とされた中、軍隊で長く原因不明な病気とされました。対策として洋食や麦食を取り入れた海軍に対し、伝染病説などから陸軍では白米主義が大正初期まで見直されず、日露戦争では戦地で25万人強の脚気患者が発生したともいわれています。脚気は、昭和後期にジャンクフードの普及による偏食から発症、平成に入ってからも、高カロリー輸液点滴時にビタミンB1投与が行政通達されるなど、古くて新しい病気です。11◆栄養の検査●江戸時代幕末、米国のペリーに続いてロシア極東艦隊司令長官プチャーチンが、長崎や函館、大阪に来航し開国を求めたものの、伊豆の戸へ田だ沖で座礁。村民たちに救助されただけでなく洋船建造技術の蓄積を狙う幕府の許可と資金負担で、代替船「ヘダ号」が新規に建造されました。その後の1855年に締結された日魯通好条約では択えと捉ろふ島と得うる撫っぷ島の間を日本とロシアの国境と定めました。●2006年、カムチャツカ政府はユネスコ世界遺産のナリツェヴォ自然公園内にゴロヴニン山、リコルド山、カヘイ峰の3つを命名しました。栄養素主な役割概 要糖質エネルギー源糖質(炭水化物)がアミラーゼ酵素などで分解されグルコースなどとして吸収されるタンパク質身体の構成成分(筋肉など)タンパク質がペプシン酵素などで分解され各種のアミノ酸として吸収されるロイシン、イソロイシン、バリンは必須アミノ酸の中でも栄養学的効果が大脂質エネルギー源、細胞膜の構成成分リパーゼ酵素などで分解され脂肪酸やモノグリセライドとして吸収される脂質として中性脂肪(トリグリセライド)、リン脂質、コレステロールミネラル身体の機能調節電解質としてナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム、マグネシウムその他に鉄、以下はごく微量ながら、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素、コバルト、クロムなどビタミン身体の機能調節体内では生合成できず食物摂取が必須水溶性9種(B1/B2/B6/B12/Cなど)は補酵素として働くため、糖質・タンパク質・脂質などの代謝に必須脂溶性4種(A/D/E/K)

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