Pipette vol.31 2021.4 Spring
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-157-157と確定する血)がみられます。血性下痢は、ほとんどが血液で、糞便を含まないことがあります。1週間後頃より、多くの人は快方に向かいますが、約10%の割合(特に小児や高齢者)でHUSや、脳障害を併発することがあります。HUSは、赤血球の急速な破壊による貧血、止血に関係する血小板の減少、腎臓の機能が急速に障害されるなどの症状が現れ、時には死に至ることもあります。HUSは下痢、腹痛などが起こってから、数日〜2週間後に起こるため、しばらくは顔面蒼白、倦怠(全身のだるさ)、乏尿(尿の量が少ない)、浮腫(むくみ)が起きていないか、中枢神経症状〔傾眠(眠くなりやすい)、幻覚、けいれん〕なども起こっていないか周りの家族が気をつけなくてはいけません。O-157は、熱に弱く、75℃1分間の加熱でほぼ死滅生します。このベロ毒素は、感染した人の血管に害を及ぼして、重篤な障害を発生させます。感染源は、家畜の糞等により汚染された食材によると言われています。生のままで食べたり、加熱が不十分、未殺菌乳、野菜、リンゴジュース、ヨーグルト等が原因であった報告があります。また、感染した患者からの二次感染(ヒトからヒトへ)も起こすことが知られています。します。しかし、低温では冷蔵庫の中でも長期生存することができます。他の大腸菌に比べて潜伏期間が長いのが特徴です。日を要します。患者の便を培地で培養します。その後、生化学的性状検査や、O抗原血清学的判別等を経て最終決定します。最近では、食品における腸管出血性大腸菌の検査方法について、厚生労働省が「ベロ毒素出法」を実施することを通知しています。出血性大腸炎の場合には、腹部超音波(エコー)検査にて、特に右側の結腸壁に著しい肥厚を認めることがあります。に抗菌薬を3〜5日間投与します。しかし、前出のように原因がOまでに時間を要してしまうと、治療が遅れてしまうこともあります。小児では、ホスホマイシン、ノルフロキサシン、カナマイシンなど、成人ではニューキノロン系、ホスホマイシンを投与します。HUSを合併してしまった場合には、透析、血漿交換、血小板輸血など積極的な治療をおこなうこととなります。症状がなくなったあとも、O-157は1〜2週間は腸の中に残り、便の中にも出てくるので(排菌)、消毒などの予防は続けて行う必要があります。-157は大腸菌の一種で、ベロ毒素を産-157であることを確定するには4〜5-157では、下痢発症後、なるべく早期こうVT遺伝子検大きな社会問題にもなった腸管出血性大腸菌O-157は、非常に毒性の強い「ベロ毒素」を産生することで知られています。若く健康な人は感染しても無症状、あるいは軽い下痢症状で終わる場合が多いのですが、乳幼児や高齢者および基礎疾患がある場合には、腹痛や血便などの出血性腸炎のほか、急性腎不全、血小板の減少、貧血などの症状を呈する溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすことがあります。時に重症化して死に至ることもある  -  O  ひ () O  O3 21 感染して症状が出るまでには平均4〜8日で、症状は激しい腹痛を伴う頻回の水様下痢に始まり、1〜2日後には、血性下痢(下腸管出血性大腸菌の1種 O157症状原因臨床検査治療手洗いの励行消毒食品を扱う際の注意 手洗いが最も重要。排便後、食事の前、特に症状のある子ども、高齢者の世話をした後は、石けんと流水でよく手を洗う。逆性石けんまたは消毒用アルコールで消毒。①消毒の範囲患者の家のトイレと洗面所。患者の用便後は、トイレの取っ手やドアのノブなど患者が触れた可能性のある部分。②消毒薬と消毒法逆性石けんまたは両性界面活性剤などを布に浸して汚染の恐れのある場所を拭き取る。噴霧はしない。③寝衣、リネン、食器患者が使用した寝衣やリネンは、家庭用漂白剤に浸潰してから洗濯する。患者の糞便が付着した物品等は、煮沸や薬剤で消毒。食器は、洗剤と流水で洗浄する。④入浴等患者が風呂を使用する場合には、混浴を避けるとともに、使用後に乳幼児を入浴させない。また、風呂の水は毎日換える。 患者がいる場合、病気が治るまでの間、野菜を含め食品すべて十分な加熱を行い、調理した食品を手で直接触れないように注意。また、一般的に食品を扱う場合には、手や調理器具を流水で十分に洗う。生肉が触れたまな板、包丁、食器等は熱湯等で十分消毒し、手を洗う。調理は、中心部まで十分に加熱するとともに、調理した食品はすみやかに食べる等です。10|Pipette留留意意事事項項二二次次感感染染のの防防止止ののたためめのの

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