Pipette vol.31 2021.4 Spring
6/12

私の役目です。「お父さんのマッサージが1日で一番楽しみ」と言っていました。そう言われてしまうと、毎日やらなければいかなくなってしまいました(笑)。今は私が毎日30〜40分マッサージしています。そうすると、ほっとするみたいで、父親のこの手のぬくもりがいいみたいですよ。手当てですよ、「手当て」。これが本当の手当てというのだなと思いました。―昴さんがお書きになったものを読ませていただきましたが、前向きで、すごくチャレンジする姿勢に感動させられますけれども、やはりお父さんである瀬古さんの性格とか、そういったところからきているのでしょうか。性格は私と全然違います。全く逆ですから。すごく理論派で、頭で考えるタイプです。私は頭で考えないタイプなので(笑)。体で考えるタイプなので、全く違うのです。うちでは家族全員が毎日笑いを提供しようと思っています。いつも笑っています。笑いは免疫力を上げると聞きましたので。祖母は、ちょっと認知症なのですが、昴が祖母との会話の中でいろいろ話すのですが、アメリカの大統領は誰だとか問題を出すとおばあちゃんは分からないわ―瀬古さんの今後の活動に目が離せませんが、近い将来の予定がございましたら、その一端でもお教えいただだければと思います。現場の選手や監督たちが、本当に気持ちよくできる環境、また、子供たちが将来マラソン選手になりたい、陸上選手になりたいと思えけです。「トがつく」とか言ったら、おばあちゃんが「と、と、寅次郎」とか言ったりするの。でも、それでみんな笑っちゃうわけです。―その笑いはいいですね(笑)。そういう本を今度出します。彼は日々の体調や気持ちを日記に書いているのですが、家族の笑いも書き溜めようと、執筆活動をしているのです。そういうものがあると、病気を忘れてしまいますからいいなと思っています。―ソウル五輪の後、帰国された瀬古さんに手作りの金メダルを昴さんからかけてもらったというエピソードですが、お父さんのことが本当に好きなのだなということが伝わってきました。トップランナーの瀬古さんの背中を見ながら昴さんも成長されてきたのかなと思いますが、走っているというようなところに関しては、何かおっしゃっていますか。彼が2歳のときにもう引退していますから、私の走っている姿は多分ほとんど覚えていないというか、見ていないと思います。でも、なんとなく心の中には応援したというのはあるのかもしれません。お父さんは昔速かった、ぐらいしか覚えていないですね(笑)。るような環境をつくることがこれからの私の仕事だと思っています。やはり私の仕事は、陸上ファン、マラソンファンをつくることです。東京オリンピック・パラリンピックを目標に、次のパリ、その次のロサンゼルスと、オリンピックは続きますが、将来有望な選手が―ご子息の昴さんが8年間も病と闘われているということを知りました。ホジキンリンパ腫という日本人としては比較的珍しいご病気にということですが。 本書の読者というのは闘病中の方、あるいはそのご家族の方が読む機会が多くございまして、瀬古さんのお話はきっと大きなお力添えになってくるのではないかと思いますので、今どういう状況なのかということをお教え願えればと思います。今年で9年目です。最初は2年ぐらい抗がん剤治療をやり、幹細胞移植もしましたが、寛解までいきませんでした。しかし、「まだ方法がある、お父さん、保険が効かないけれどもやってみますか」とお医者さんは言うのです。オプジーボという薬です。これは免疫で治す薬で、あまり体に負担がないのでやってみませんか。でも、お金が掛かりますよと言われまして(笑)。日本ではまだ承認されておらず、ドイツから輸入してもらいました。それが効いてずっとここまできています。もしオプジーボがなかったら、多分厳しかったと思います。今は、副作用も結構あるのですけれども、オプジーボでうまく治療しながら、先生たちに支えてもらって、なんとか頑張って元気で生きています。2週間に1回の通院、月に1回オプジーボを打つので、今は月に2回家内か私が同行しています。最近は彼は家で過ごす時間が長くなりましたね。ここ半年くらいは、ずっと入院が多かったです。去年はずっと入院していました。退院したら、毎日マッサージするのが今父から子への「手当て」今後の活動・箱根駅伝の感想について       5

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る