Pipette Vol.5 Autumn 2014
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11●インフルエンザとかぜの違いインフルエンザは普通のかぜ(感冒)とは異なり、突然の38度以上の高熱、関節や筋肉の痛み、全身のだるさなど、全身症状が出るのが特徴です。一方、かぜ症状はのどの痛み、鼻水、くしゃみや咳などの呼吸器症状が主です。インフルエンザは、ウイルスによって感染し、気管支炎や肺炎を併発しやすく、重症化すると脳炎や心不全を起こすこともあり、体力のない高齢者や乳幼児などは命にかかわることがあります。また、冬季に突如、大流行となるのが特徴です。●インフルエンザの検査鼻やのどからの「ぬぐい液」(通常は綿棒を用いて採取します)を、迅速診断キットという検査試薬を使って、インフルエンザウイルスがいるかどうかを調べます。15分程度で結果が出ますが、発症直後に検査をした場合はウイルスの数が少なく、感染していても陰性となることがあります。陽性の場合は、A型またはB型として判定されます。●インフルエンザの治療・ワクチン近年、タミフルに代表されるような抗インフルエンザウイルス薬が数種類、保険適用になり臨床現場で使用されるようになりました。しかし、使用に当たっては医師の処方が必要で、薬の種類により経口、吸入、点滴で投与されます。なお、インフルエンザが流行する前にワクチンを接種することによって、インフルエンザに罹りにくく、感染しても軽症ですむ場合があります。しかし、このワクチンの効果は長く続かないとされているので、毎年、流行前(秋~冬)に接種することが有効です。●インフルエンザの予防インフルエンザやかぜに罹らないためには、外出後には必ず手洗い・うがいをしましょう。外出時のマスク着用も効果があります。また、他の人に移さないために、咳やくしゃみが出るときはティッシュペーパーで口や鼻を被いましょう。できれば、マスクを着用してください(咳エチケットを守りましょう!)。また、部屋の湿度を保つこと、栄養と休養を十分にとり、体力をつけて免疫力を高めることで、感染しにくくなります。●サイトカインストーム死亡被害を含む顕著な感染(特に伝染病)の世界的、全国的な流行は「パンデミック」と呼ばれます。インフルエンザパンデミックの最近の医学研究成果から、谷風はサイトカインストームで死亡したのでは?と推測することもできます。体力自慢の谷風は、巨漢・肥満の相撲取りでした。筋肉も多かったでしょうが脂肪も多かったと想像できます。実は脂肪細胞はサイトカイン(IL─6、IL─1、およびTNF─αなど)を大量に産生する組織であると考えられています。インフルエンザウイルスが体内に入ると、それが刺激となり、過剰な脂肪細胞から大量のサイトカイン産生が惹起されます。これらのサイトカインに刺激されたマクロファージ、および好中球が肺の血管内皮細胞を傷害し、急性呼吸窮迫症候群を引き起こしたことが谷風の死因であったのではないかと考えられます。  もし、谷風が今を生きる横綱であれば、サイトカインストームを抑制する治療で元気になり、もっと多くの白星を挙げられたことは間違いないでしょう。◆インフルエンザの検査●落語「佐野山」は、病気の母親を抱える十両力士佐野山の窮状を知り、見舞った谷風が相撲会所に働きかけ、自分との取組を作り、集まった懸賞から、佐野山にわざと負ける相撲をとるが、江戸っ子はそれを受け入れて、喝采を送ったという架空の人情噺。それほどに谷風の人格は名声を得ていました。●谷風がかかった寛政7年のインフルエンザの正式名は「御お猪い狩かり風かぜ」です。しかし、谷風が「倒れたわしを見たければ」と豪語した当年に流行っていたインフルエンザが「タニカゼ」と呼ばれたことから、後に混同されました。

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