Pipette Vol.6 Winter 2015
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4絶対に準備をしているはずです。きちんと準備をするということは、スケートに限ることではなく、必要だと思っています。―私たちの業界は若い女性が多いのです。細胞を見て、これが治療や診断につながるのかと思うと、怖いと思う瞬間があるのですが、それを乗り越えるには、普段からのきちんとした勉強と準備が必要なんだなと、今うかがったお話で強く思いました。摂食障害を乗り越える―摂食障害になられましたが、大学のとき仙台に行かれたのが大きな原因でしょうか。私は、もともと完璧主義なところがあったんです。それまで親元にいて、何もかも母がやってくれていたのが、一人になって、自分でしっかりやりたいと思ったのと、見られるスポーツなので、太ってはいけないと自分にプレッシャーをかけてしまって……。もう11年経ちますから、今となっては笑い話ですが、あのときは真っ暗な、光が見えない状態で、「もしかしたら自分は死ぬのかな」と。そんな中でも、私にはスケートがあったので、「氷の上に、どうしても立ちたい。もう一度、その場に戻りたい」という気持ちだけは失っていませんでした。心療内科の先生も、こんなに早い回復は稀だとおっしゃっていましたが、自分自身が最後までスケートを諦めなかったから克服できたのかなと思っています。病気になると、どうしても先が見えなくなってしまいますが、そんな中でも何か夢や目標があれば、それが支えになるはずです。人にバカにされようが、「そんなこと、できるわけがないよ」と言われようが、自分の気持ちの中に夢や目標を持つことで、それが支えになり、生きる強さにつながります。自分一人だけで頑張るのではなくて、人が喜んでくれる、あの人の笑顔を見たい、そんな人とのかかわりの中での小さな喜びのためだけでもいいのです。―摂食障害を克服されるきっかけのもう一つには、お母さまとのお話があるということですが。あのとき、母は自分の娘が食事をとれないことを、なかなか受け入れられなかったんです。食べるということは、人間にとってもっとも基本的なことで、私自身がまず受け入れられず、自分を責めていましたから。「自分は誰にも受け入れてもらえない、生きている意味がない」と……。そんなとき、母が「いいよ、食べられないんだったら。食べられるものから、ちょっとでいいからね」って言ってくれたんです。このときはじめて、今のこの状態でも「生きていていいんだな」って思えたんです。こんな自分でも生きる意味があるんだなと思えた瞬間だったんです。今の自分自身を受け入れたうえで進む、そこが第1ステップで、母が受け入れてくれたことで、そのステップを進むことができました。―多くの患者さんも、ご自分の病気について、まさかそんなはずはないと、なかなか受け入れられないと思うのですが……。そうですね。でも、起きてしまったことに対して、自分も周囲も受け入れることが第1ステップだと思います。そのあと、母が作ってくれたものを少しずつ食べられるようになったら、「食べてくれた」と母が泣いたそうです。それを聞いたときに、「食事をしてこんなに喜んでくれる人がいる。ああ、悲しませてはいけないな」って、痛切に感じました。今は、できるだけ父母に親孝行をしたいと思っています。

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