Pipette Vol7
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●グッジョブ・技師のお仕事ゲスト 田崎真也5ここが一番大きな問題で、子どもの食育の重要な点なのです。嗅覚はトレーニングで磨かれる―嗅覚は、トレーニングできる感覚ですか。嗅ぐ習慣をつけること、嗅ぐことを意識することが大事だと思います。これは視覚も聴覚も一緒で、意識して見る、意識して聴くことで視覚、聴覚も鍛えられると思います。味覚もそうです。例えばオレンジジュースを飲んで、飲んだ瞬間にどこで甘味を感じて、どこで酸味を感じて、どこで苦味を感じて、というのを意識しながら飲むのです。コーヒーはかなり酸が強いのですが、「この酸味がいいですね」という人はいないですね。苦味で酸味がマスキングされていて、コーヒーは苦いものだという潜在意識もありますが、あまり酸を意識していない。意識することが重要なのです。―年を取ってくると、いろいろなものが鈍くなってくるのでは……。それもそう思っているだけで、潜在意識の中に経験したものが多ければ多いほど、経験知で感覚は豊かになります。子どものほうが鍛えていくスピード、進化するスピードは速いですが、大人になると、そこがスローになるだけで、落ち込んでいくわけではないと思います。その分、経験を積んでいるわけですから、感覚を自分なりに分析して理解していくことが重要だと思います。女性の場合は、お料理を作ったり化粧品を使ったりするときに、自然に香りを意識します。男性の場合はそういうチャンスがほとんどないわけで、花を見て「わっ、きれい」という感覚はあるかもしれませんが、香りがどうかと意識して嗅ぐことはないでしょうし、紅葉を見て「わあ、すばらしい」と思っても、空気の香りを嗅ごうとはしないと思うのです。新緑の時期と紅葉の時期とでは、森の香りはどう違うのかという意識を持って嗅ぐことも少ないと思うのです。意識を持つことがトレーニングになります。嗅覚は、何歳になってからでも〝使う〟ことを意識するだけで、相当伸びてきます。1カ月意識すれば、1万倍くらいは戻るのではないかと思いますね。インタビューを終えてワイン好きが田崎さんに会えて光栄でしたし、お酒のティスティングまでできて幸せな気分になりました。楽しんで食べていただくための味覚・嗅覚検査を私たち臨床検査技師が担当できるようになりましたが、頑張ろうと感じました。次回は歌手で画家でもある八代亜紀さんをゲストに迎えます。お楽しみに。嗅覚は1カ月意識すれば、1万倍くらいは戻るのではないかと思いますねプロフィール●1958年、東京都生まれ。国際ソムリエ協会会長。1995年、「第8回世界最優秀ソムリエコンクール」で日本人として初めて優勝。2011年、日本に本格的なワイン文化を普及させた功績で「黄綬褒章」受賞。著書に、『ワイン生活』『田崎真也のワインを愉しむ』『接待の一流』『言葉にして伝える技術』他。田崎真也Shinya Tasaki

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