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「 臨床検査業務中の困った」にお答え! リスクマネジメントのQ&A

近年、医療事故の増加に伴い、会員の皆さまからも業務中のリスクマネジメントに関するお問い合わせが増えてきました。その内容は臨床検査技師の業務範囲に関するものから、社会的な責任に関するものまで多岐にわたっています。そこで会員の皆さまの不安を少しでも解消するお手伝いができれば、と、お問い合わせ事例とともに各方面の専門家からのアドバイスをホームページ上で公開していきます。民事事件と刑事事件、各困った事例別にカテゴリー分けしてあるので、もしものときには関係しそうな見出しからQを選んで参考にしてみてください。

生理検査中に関する困った

消毒のアルコールやホルター心電図での固定テープではわりとあるのですが、皮膚が炎症を起こした場合については、訴訟されるようなこと(例えば説明不足による技師側の責任など)はありうるでしょうか?また。ホルター心電図のように長時間かけて患者に電極を装着する検査において、その電極装着部位が爛れたり、出血したりした時に後日、担当の臨床検査技師の責任を問われたら、どのように対処すべきですか?
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検査のために被検査者に対し、皮膚の炎症、爛れなどを生じさせた場合は以下のように検討を加える必要があると考えられます。
(1) 当該検査を行えば、一般的に皮膚の炎症等が生じることが通常であるか否か。
(2) 通常であるとして、当該被検査者について、当該検査を行う必要性がどの程度あったか。
(3) 当該検査を行うことによって得られる被検査者の利益と、当該検査を行わないことによる不利益とを考量し、前者が後者を上回れば、当該検査を行った結果皮膚の炎症などを生じたとしても責任は問えないと思われます。
(4) 前者が後者を下回った場合は、敢えて検査を行う必要性はなかったといえるのであり、責任が生じる可能性があります。
(5) 前記の場合、被検査者に対して検査に関する情報を提供し、かつ当該検査により皮膚の炎症等が生じることを十分に説明したうえ、被検査者が自ら検査の施行を選択したとしたら責任は生じない可能性があります。
(6) 当該検査を行えば、皮膚の炎症などが生じることは一般的にはないが、小数に炎症などが発生する可能性のあることが判明している場合。
(7) 当該被検査者が、その小数の者に該当するか否かにつき、事前チェックを行ったか否か。
(8) 事前チェックを行った結果、該当しないとの結論を得て、検査を行ったところ予期に反して炎症が発生した場合。事前チェックの手法、内容等が妥当であったか否かが問題となります。検査時における臨床検査業務の一般的なレベルにおいて予測不可能もしくは困難であった場合は、責任は生じないと考えられる。これに対し、予測可能であった場合は責任が生じます。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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患者さんに負荷をかける検査で、負荷前のデータでは異常所見は無かったため負荷(マスター負荷や脳波賦活)を行いましたが、その結果、患者さんが不整脈や心筋梗塞、脳梗塞、呼吸や心不全などになり、重篤な状態に陥ってしまった場合、検査を担当した臨床検査技師の責任はどうなるのでしょうか?
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(1) 被検査者が、もともとこれらの病気を持っていた場合、病気に関する判断は医師が行うものであり、臨床検査技師には病気の診断はできないのが通常であるし、診断行為は医師以外行ってはならないとされています。したがって、検査に入る事前準備として医師から被検査者の状態についてどの程度情報を得ていたかが問題となります。十分な情報を得ないまま、
(2) 被検査者は、もともとこれらの病気を持っていなかったが、本件検査が原因でこれらの状況が発生した場合。検査を開始するに当たって、臨床検査技師には通常予測困難であると考えられます。したがって、原則として責任は生じないと思われます。しかし、検査施行中に被検査者になんらかの異常が発見された場合は、直ちに検査を中止し、不整脈や心筋梗塞などの発生を防止する手段を講じる必要があり、これを怠った場合は責任が生じます。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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検査前後にベッドへの移動や、車椅子などへの移動の際の患者転倒による事故責任について。また、医師が立ち会わない場合(医師が検査中、席をはずした場合)も含めてのトレッドミルやマスターなど(負荷心電図検査)での転倒、およびスパイロ(呼吸機能検査)における呼出ふらつきによる転倒事故責任について教えてください。
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民事上、不法行為責任が、刑事上は業務上過失傷害罪が成立すると考えられます。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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検査中に患者さんが急変し、医師到着までに蘇生行為をしたものの、重度な後遺症が残ってしまった場合や死亡してしまった場合。(あくまでも単純に目の前で急変し、医療人としてではなく一人の人間として得ている知識を使って蘇生活動をした場合です。) 蘇生活動を行ったことは適と判断されるのでしょうか?それとも医師法上禁止行為と判断されるのでしょうか? また心臓マッサージ中に肋骨を折ってしまった場合はどうなりますか?
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A@Aの事例の場合に、このような状況になったときは、それぞれA@Aの回答を参照してください。
A@Aのいずれにも該当しない場合において、上記のような急変が生じた場合。被検査者の救命のため蘇生行為を行うことは、民法上事務管理とされ、その結果被検査者に何らかの損害が生じたとしても責任はないとされています。
医師法上、禁止されているのは「医業」です。すなわち、医療行為を業として行うことです。業として行う意思がなく、一回限りの場合は「医業」には該当しません。したがって、緊急の事態に遭遇して、直ちに医師の診察、治療を受けることができない状況にある場合に、医師でないものが応急手当を行うことは「医業」には該当しません。

【参考】
〔民法〕
第六百九十八条  管理者カ本人ノ身体、名誉又ハ財産ニ対スル急迫ノ危害ヲ免レシムル為メニ其事務ノ管理ヲ為シタルトキハ悪意又ハ重大ナル過失アルニ非サレハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス

〔医師法〕
第四章 業務
第十七条  医師でなければ、医業をなしてはならない。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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精度管理事業でサンプル取得のため医療行為以外で採血をする、また健康展などで健常者の方々へボランティアとして採血をするなどの行為に対して、もし打たれた方が痺れ、痛みが生じた場合の損害賠償について教えてください。
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「臨床検査技師賠償責任保険」は、臨床検査技師等に関する法律(第2条・第20条の2第一項)に基づいて、国家資格を有する臨床検査技師が行える業務の遂行によって、他人の生命、身体を害したり、財物を損壊した時に、負担しなければならない法律上の損害賠償責任について補償する保険です。
従いまして、採血業務に関しては、医師、看護師同様、臨床検査技師が行える業務の一つであり、採血対象者が、患者さんであろうが、健常者であろうが、また、臨床検査技師同士であろうが、採血をする側が、臨床検査技師の資格を有していれば、補償の対象となります。
また、医療行為以外、例えば研究のため、研修のため、健康展などのボランティア活動中の採血事故も、補償対象となります。
ただ、病院での勤務中の医療事故での損害賠償の場合は、病院側の使用者責任も問われますので、使用者責任である「病院賠償責任保険」と当事者責任である「臨床検査技師賠償責任保険」両方で補償を行うのが一般的です。一方、研究、研修、ボランティア時は、主催者側が、賠償責任保険に入っているケースはほとんどありませんので、当事者責任である「臨床検査技師賠償責任保険」で補償する以外ないケースが、多く見受けられます。

(文責:石井 英雄 (株)メディクプランニングオフィス)


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精度管理のために病院内で臨床検査技師同士採血のために注射を打ち合った場合も「臨床検査技師賠償責任保険」の対象となりますか。医師もしくは施設の部長等の指示が明らかでない場合もあります。基準範囲を設定するための技師会活動の一部にあたります。
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補償の対象になります。ただ、この場合、病院の許可を取得していたとしても、技師会活動の一環である以上、病院の使用者責任を補償する「病院賠償責任保険」では、補償が出来ないと考えられます。技師会活動の責任者、採血を行う臨床検査技師の方の「臨床検査技師賠償責任保険」への加入の有無を確認しておいた方がよいでしょう。

(文責:石井 英雄 (株)メディクプランニングオフィス)


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内視鏡業務で、臨床検査技師の実施できる業務範囲と賠償責任保険での補償できることについて教えてください。
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臨床検査技師賠償責任保険は、臨床検査技師・衛生検査技師が行う業務に関して、賠償責任が生ずる民事上の事故に対する補償をしております。したがいまして、昭和33年に施行された、臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律に基づいて、それに伴う業務中に起こった医療過誤に対する賠償責任を補償しています。
ただ、何分、法律が施行された(その後、何回か改定された)年代が古く、現在の新技術と必ずしも法律がマッチしていないというご意見も良く聞かれます。
しかし、臨床検査業務の遂行にあたっては、法律上定義されてないからという理由で、臨床検査技師が、病院や医師の指示をないがしろにしてその業務を拒否する事は、現実には雇用関係上難しいと推測されます。
そういう点を考慮して、明らかに臨床検査技師が行えない業務、例えば麻酔の投与、静脈内注射などを除いては、臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律第2条の「医師の指示のもとでの診療補助行為」として臨床検査技師が行う業務に関しては、できる限り賠償責任保険の対象としております。
但し、もし現実に医療過誤が起きてしまった場合は、臨床検査技師単独の不法行為責任というよりも、医師などとの共同不法行為責任となると考えられます。

(文責:石井 英雄 (株)メディクプランニングオフィス)


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見落としに関する困った

検査データが医師に連絡を要するような異常波形の時、異常が判っていたにも関わらずそれを怠って、患者さんが帰宅した後に重篤な状態になってしまった場合、臨床検査技師の責任はどうなりますか? また、異常波形の判断がつかずに放置し、患者さんが帰宅した後に重篤な状態になってしまった場合の臨床検査技師の責任はどうでしょうか
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データの見落としに関しては、そのデータを信頼した臨床医によって、手術など治療行為がなされるという点では、検体検査における検体の取り違えなどと同様、臨床検査技師にも不法行為責任が成立すると考えられます。但し、判別しづらい所見のデータ価値に関しては、現在の医療水準と照らし合わせて、臨床検査技師当事者の過失責任が在るか否かを判断する必要があると考えられます。
また、検査データに異常波形が有り、異常に関する情報を速やかに医師に伝達しなかった為に、患者に著しい被害を与えた場合の臨床検査技師の責任ですが、異常波形のような緊急時への対応に関しては、医療機関内で異常データに関する対応指針、ガイドライン、マニュアル等を作成しておくべきだと考えられます。医師との相互連携のもと、異常データの取り扱いに関して取り決めをし、それを臨床検査技師自身が守らないが為に、患者さんが著しい被害を被った場合には、臨床検査技師自身にも重大な過失が有ったと考えられます。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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検査機器操作不備に関する困った

検査科の備品である機器で、技師が操作可能な装置を、業者不在時に医師の命により技師が操作し未習熟による事故が発生した場合、技師個人に対する「責任」と指示した医師や「技師長及び病院」の管理責任(使用者責任)等について。
また、機器がOP室やその他、検査科以外の部署の管理備品で、技師が操作可能な装置で、業者不在時に医師に命により技師が操作し未習熟による事故が発生した場合、技師個人に対する「責任」と指示した医師や「技師長及び病院」の管理責任(使用者責任)等について。
さらに、機器が病院の備品(購入品)ではないけれど、継続的に病院内に置かれ無資格(または有資格)の業者がその操作を誤った場合、もしくは業者の未習熟による事故に対する「技師長及び病院」の管理責任(使用者責任)等について。(検査技師は操作等、関与していない場合)検査機器のトラブルで患者に危害を与えた場合、検査機器始業点検簿の有無では、訴訟が起きた際にどのような差が生じるのでしょうか?
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機器を実際に使用した臨床検査技師ないし無資格者には、当事者としての不法行為責任が生じると考えられます。また検査機器を使用し、検査をするよう命じた病院や医師・技師長には、使用者責任(管理上の責任)が生じる可能性があります。その他操作上のミスよりも検査機器の欠陥により生じたミスに関しては、PL法(生産物責任法)など、機器を製作したメーカーの責任が問われる場合も有ります。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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採血業務中に関する困った

採血を行った患者から採血した腕が痺れるとの訴えがあった場合、臨床検査技師の責任はどうなるのでしょうか?
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このような、採血業務中の筋肉損傷や腕の痺れなどの訴えが増加傾向にあるようです。これまでにも採血中の事故で、臨床検査技師と病院を訴えた患者さん(美容師)に対して、地裁で3800万円の損害賠償を認める判決が出ましたが、今後共、採血中の事故に関しては、医療従事者が当事者責任を問われるケースが起こり得ると考えられます。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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臨床医がオーダーリングシステムにより多くの検査を依頼し、臨床検査技師が採取可能な採血量(20ml)を超えて採血、さらにその行為により患者さんが貧血などの症状に陥ってしまった場合は臨床検査技師の責任はいかがなりますか?
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このケースでは、臨床医の依頼によって検査が行われており、臨床検査技師はそれに従っただけであり責任はないといえそうですが、残念ながら、そうは言えません。臨床検査技師は検査の専門家として、採取可能な採血量は当然知っていなければならないし、医師からこれを超える量の採血を指示もしくは依頼された場合は、医師を説得し、場合によっては拒否することによって、超過部分についての採血をするべきではないのです。現実問題として、医師と検査技師の関係性等によっては難しい面もありますが、これを理由に責任を回避することは許されません。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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研修会を開催し、医師の指示のもとに臨床検査技師が採血中に起こした医療事故に関しては補償の対象となりますか。

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補償の対象になります。ただ、この場合、もし、採血中に採血された方に神経損傷や筋肉損傷がおこった場合、研修会に協力した医師にも共同不法行為として、迷惑がかかる可能性が生じます。医師が「医師賠償責任保険」にご加入しているか、また、採血をした臨床検査技師が「臨床検査技師賠償責任保険」の任意加入部分(対人事故補償限度額1億円)にご加入しているか、有無を確認しておいた方が良いと思われます。

(文責:石井 英雄 (株)メディクプランニングオフィス)


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患者情報管理に関する困った

超音波検査などの検査中に技師同士で専門用語を使い所見を交えて話していたところ、患者さんがそれを聞き、不安を感じて家族よりクレームを受けたことがあります。こうした検査中の会話によって患者さんへの精神的不安を与えてしまった場合の責任問題は? また新人教育中で新人が最初検査していた途中から先輩技師(または医師)に交代し、患者さんに余計な不安を与えた場合や、誤って患者に未告知の病名が知られてしまった場合の責任問題はいかがなりますか?
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単純に不安を与えただけで、直ちに損害賠償請求ということにはならないでしょう。しかし、医療に従事する者として、患者の身体的状況のみならず、心理的な面についても常に細心の注意を払って対応する必要があります。もちろん、不安が高じて病気が重くなったり、自殺したというような事態が発生すれば、責任問題が生じる可能性もあります。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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患者さんから検査所見に対する説明を強く求められた時、臨床検査技師の立場として法的に問題の無い範囲の説明はどのようなものなのでしょうか?
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患者さんが自分の病気や治療方法、あるいは自分の身体に関する検査結果につき知ることは、患者さんの自己決定権を充足するものとして必要なものです。しかし、検査結果をすべて開示することが場合によっては、患者さんの不安を増大し、もしくは重篤な病気の存在を知らしめることとなります。患者さんに対して、どの程度情報提供、説明をすべきかは治療に当たっている医師の判断によるのが妥当でしょう。したがって、検査技師としては患者さんから説明を求められた場合、すぐに説明するのではなく、まず医師の判断を仰ぎ、そのうえで対応するのが最善策と考えられます。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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自分の検査した症例の検査データを使用し、病院以外の場所での講演や学会発表をする場合はどのような事に留意するべきでしょうか?
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患者さんの治療行為に伴う検査は、本来、当該患者の病気の治療を目的として行われるものです。そして、当該患者の検査結果は、当該患者に関する情報です。その情報を使用するについては、当該患者の治療行為の目的のためという限定が付いているものと考えるべきです。臨床検査技師には、法律上「秘密保持義務」があります。したがって、患者さんの情報を、不用意に第三者に開示した場合は、これに違反することになります。また、患者さんのプライバシーを侵害することになりますから、損害賠償の対象にもなります。患者さんの検査結果を、学会等に発表したい場合は、患者さんに事前の了承を得るか、もしくは個人が特定されないような工夫をして発表するべきでしょう。

【参考】
臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律第4章第19条
「臨床検査技師又は衛生検査技師は正当な理由がなく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない」

(文責:岡 讓治 弁護士)


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セクハラに関する困った

心電図検査や心臓超音波検査などは胸をはだけ、電極の位置を決めたりプローブを胸に当てたりして胸部に触らなければなりませんが、その行為を男性の臨床検査技師が女性の患者さんに行ってトラブルが生じた場合、法的に争点となるのはどのような事ですか?
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可能な限り女性の患者さんについては、女性の臨床検査技師が対応するようにしましょう。とはいっても、常にそれが可能というわけではありません。次善の策は、検査現場に患者さんの家族などの肉親や、女性の看護師などに立ち会ってもらうことです。それも、困難である場合は患者さんに対して、検査の内容、方法等を事前に十分説明し身体に触れることの了承を得る必要があるでしょう。いずれにしても、女性患者と1対1で検査を行うのは避けるべきでしょう。それでも、トラブルになり強制わいせつ罪などで告訴された場合は、正当な検査行為か否かが争点になります。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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一般的な社会的責任に関する困った

一般企業でもあると思いますが、患者さんが心電図などのため衣服を脱ぎ、そのまま脱衣カゴに忘れ物(貴重品、高価品)として残され、検査担当者が忙しさのため、確認を怠ったことで、紛失あるいは破損が発生した場合、どのようなことになりますか? 例えば弁償の有無、担当技師や病院側の責任等はいかがでしょうか?
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まず、検査の必要上衣服を脱がなければならない場合、病院としては当然患者の衣服、持ち物を預かることになります。つまり、保管上の責任が発生します。これは、臨床検査技師個人の問題ではありません。病院として、保管責任をつくしたか否かの問題です。したがって、第一次的には病院が損害賠償等の責任を負うことになります。なお、最近病院と検査センターの契約で検査技師が病院に派遣され検査業務を行っている場合があります。この場合、検査業務が病院とは独立して検査センターの業務として行われていることになり、その際は病院との何らかの取り決めがない限り、担当の臨床検査技師が、患者の衣服等の保管義務を負うことになります。したがって、臨床検査技師が責任を追う可能性があります。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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検査中に電話などで患者さんから目を離していた間に、患者さんが勝手にトイレに行こうとしてベッドから転落し骨折などの大けがをした場合は、臨床検査技師の責任はどうなりますか?
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患者さんがトイレに行く際に手助けをすることは、介助の問題です。検査業務を専門とする臨床検査技師に、患者の介助義務があるかというと、おそらく臨床検査技師という立場から直ちには導かれないでしょう。ただ、他に介助する者がいない状況であれば、事実上介助義務が発生する可能性はあります。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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臨床検査技師・衛生検査技師の業務範囲に関する困った

最近、臨床検査技師の業務の範疇でない血圧脈波(血圧測定が自動計測できる)や携帯用の自動血圧計測定器などが流行っていますが、臨床医からの検査導入の依頼があった場合は、検査室では安易に引き受けて良いのでしょうか? 同じく、内耳機能検査やティンパノグラム、嗅覚や味覚検査を耳鼻科医の監督下で行っていますが問題はないのでしょうか?
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最近、講演時などに業務内容に関するご質問を多くいただきます。この背景には、臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律は、昭和33年の施行であり、その後、医療技術の急速な進歩や医療機器の高度化に伴い、業務内容も変化しつつある事が要因と考えられます。そのため、検査業務の現場では従来は考えられなかった検査方法が導入されることが生じます。これらについては、本来立法的に手当てをすべき事柄です。しかしながら、立法作業は国民総体の理解を得る必要があるなど、どうしても時間を要します。そこで、ひとつの解決方法として従来の法律を準用するなどの工夫が考えられますが、これにも限界があります。この点に関しては、新しい業務内容を法制化する努力を団体としてするとともに、医療機関の中で、他の医療従事者と相談し、チーム医療として役割分担を明確化する事が必要と考えております。

(文責:岡 讓治 弁護士)


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刑事事件に関して 

現在「臨床検査技師賠償責任保険」に加入していますが、この保険ではもし事故を起こした場合、民事訴訟については対人補償並びに弁護士費用や裁判時の費用などの争訟費用は担保されているものの、刑事事件は補償の対象にならないのでしょうか?
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「臨床検査技師賠償責任保険」に限らず、保険は道義上刑事訴訟に関しては、弁護士費用等の補償を含め対応できません。ただし、(社)日本臨床衛生検査技師会には、独自の共済制度規程を設けて、刑事事件の争訟費用を補償する互助制度があります。
また、医療過誤訴訟では、これまでは損害賠償金を請求する民事訴訟が形態としては一般的でしたが、最近は刑事事件での訴えをすることにより、民事の賠償金額を高額にするスタイルの訴訟が見受けられるようになりました。こうした場合でも、内容により民事上の争訟費用で弁護士費用の対応が出来る事もありますので、もしものときにはできるだけ早めに「臨床検査技師保険」事務代行会社(株)メディクプランニングオフィスまでご相談ください。

(文責:石井英雄 (株)メディクプランニングオフィス)


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コラム

医療事故に対する刑事処分のあり方 ─ 弁護士の見解 ─

仁邦法律事務所
弁護士 蒔田 覚

はじめに

2006年、福島県立大野病院の産婦人科医師が逮捕されたことで、医療界に激震が走りました。現在、担当医師が無罪を争って刑事裁判が進行中でありますが、仮に「無罪」となったとしても同医師が失ったものは計り知れません。この案件が萎縮医療に一層の拍車をかけました。最近、社会問題になっている「患者たらい回し(診療拒否)」の1要因となっていることも否定できません。
医療事故発生には、人的要素(MAN)に加え、医療機器(MACHINE)、医療環境(MEDIA)、管理体制(MANAGEMENT)といった要素が深く関わっており、医療事故防止のためには、ルートコーズ分析(根本原因分析法)などによる原因究明が必要です。医療従事者の責任を重くしたとしても、これのみで医療事故を防止できるものではありません。刑罰による萎縮効果に鑑みれば、医師への厳しい責任追及は、むしろ有害ですらあります。医療事故に対する刑事処分のあり方については、慎重な検討が求められている所以です。
2007年10月に診療関連死についての第二次試案、同年末には、自民党案が提示されました。これを機会に、死因究明のあり方、刑事責任のあり方について活発な議論がなされることを切に望みます。

2008年1月

※本件は2008年8月20日、福島地方裁判所は、被告人の医師を無罪とする判決を言い渡し、検察側が控訴を断念したため確定した。医師は休職中であったが同病院に復職した。

法的責任(刑事責任)の構造

1 本法における処罰根拠

刑法38粂1項は「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と規定しています。刑法の目的が、一般予防(犯罪の抑制)、特別予防(犯人の更生、再犯防止)にあることに照らせば、処罰対象を『故意犯』に限ることにも合理性があります。意図的に害悪を加えようとする者に対しては厳罰をもって対処する必要がありますが、過失により結果として害悪を与えた者に対して重い処罰を科したとしても、一般予防、特別予防の効果は十分に期待できません。刑罰は、いわば身体的侵襲の極めて高い外科手術のようなもので、その用法を誤ると有害事象を招きかねないのです。
この点、同法211粂1項(業務上過失致死傷等)は、人の生命身体という保護法益の重大性から「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」と規定し、重過失の場合ばかりでなく、業務上必要な注意を怠った場合には「単純過失」であっても処罰の対象となることを定めています。
ここにいう業務とは、判例上「社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、生命身体に危険を生じ得るものをいう(最判昭和33年4月18日刑集12巻6号1090頁)。」との解釈が定着しています。日常用語における業務とは「職業として日常継続して行われる仕事」を意味しますが、広義・狭義のいずれの意味と理解したとしても、医師の行う医業が、業務上過失致死傷における業務であることは明白です。

2 比較法的検討

この点、米国では、「非故意殺(≒過失犯)が成立するためには、単純過失では足りません。単純過失は、民事責任の根拠にしかなり得ない(コモンローの原則)。」という考えが定着しており、刑事処分の対象となるのは、原則として「重大な過失」に限定されます(2州を除く)。民事責任において懲罰的損害賠償を認めている米国との単純な比較はできませんが、単純過失犯に対し刑罰をもって対処するという日本の考え方が、普遍的なものでないことは明らかです。

3 異状死体の届出義務

医師法21条は、「医師は,死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と規定しています。この規定に違反した場合には、50万円以下の罰金が科されます。同条の立法趣旨は、医師のもとに、犯罪に関連した死体が届くことも少なくないことから、医師に届出義務を課すことで、犯罪者の逃亡、罪証隠滅の防止を図る点にあります。旧厚生省の見解も「殺人、傷害致死、死体損壊、堕胎等の犯罪の痕跡を止めている場合に、届出の必要がある。」としていました。従来、医療事故による業務上過失致死の場合にまで、届出義務があるとは認識されていませんでした。
しかし、某都立病院の消毒剤誤投与事件の平成16年4月13円最高裁判所判決において、医療事故に伴う業務上過失致死事件も医師法21条に含まれることが確認されました。同事案において、医師法21条の立法趣旨に関し「捜査の端緒(司法警察目的)のほか、警察官が緊急に被害拡大防止を講ずるなどして社会防衛を図る目的(行政警察日的)もある。」としているとの見解が示されたました。また、「医師免許は、人の生命を直接左右する診療行為を行う資格を付与するとともに、それに伴う『社会的責務』を課すものである。」としています。
医師法21条に関する最高裁判所の見解は、必ずしも医療現場の納得を得られるものではありませんが、法律実務においては、医療事故による業務上過失致死事件が医師法21条の届出対象であるとの理解が定着したといってよいでしょう。また、日本法医学会ガイドライン、日本外科学会の声明文等においても、届出の範囲に違いこそあれ、診療行為に関連した死亡が医師法21条の届出義務の範疇に含まれることに変わりはありません。
なお、医師法21条違反は、上述のとおり50万円以下の罰金にすぎませんが、@比較的立証が容易なこと、Aこれを怠ったことが罪証隠滅、逃亡の畏れの根拠として、逮捕・勾留の要件となりうること、B業務上過失致死事件で公判請求されている事件の多くは、医師法21条違反も問われていることなどから、これを怠った場合の医師の責任は決して軽くありません。

刑事事件の現状

医療事故に関連する刑事事件の動向は別表のとおりです。1999年以前の届出件数、送致件数(警察で事件性があると判断して、検察庁へ送致した件数)は、いずれも20件/年未満でした。しかし、2000年以降、届出件数は急増し、2004年には約10倍の200件/年に迫る勢いです。また、送致件数も増加しており2004年以降80件/年という状況にあります。
起訴件数(検察官が犯罪性が濃厚として裁判所に起訴する件数)は、1999年以前の25年で76件でしたが、1999年から2004年までの5年間で、これを上回る79件にも及んでいます。

検察官には広範な起訴裁量(刑事訴訟法248条)が認められていることもあり、従前、医療事故に関しては、医療の社会的有用性、処罰した場合の社会的影響を考慮し、極めて謙抑的な取扱いがなされていました。これが1999年を境に一変したといえます。警視庁や東京検察庁では医療事故を専門的に取り扱う部署も設置されたようです。
このような変化の背景には、医療に対する根強い社会不信があります。マスコミによる過剰な煽動があったことは否めないとしても、医療従事者の対応そのものが医療不信を煽った側両もあることは認めざるを得ません。次に掲げる2つの事例は、いずれも1999年のものです。これらの事案がなければ現状は大きく異なっていたかもしれません。
@ 某市立大学患者取り違え事件
事案の概要

患者A(74歳)は、重度の僧帽弁閉鎖不全症により、平成11年1月11日午前9時に3番手術室で僧帽弁形成又は置換の手術(心臓手術)が予定されていた患者である。同人は耳が遠く、意識的に話しかけないと反応がないことがあり、また、何にでも「はい」と答え、本当に分かっているのか不安に感じるようなところがあった。
患者B(84歳)は、右肺上葉S2の部位に肺癌の十分な疑いがあり、縦隔リンパ節及び右肺下葉S6の部位に転移が疑われたことから、平成11年1月11日午前9時に12番手術室で、開胸生検・右肺上葉切除・リンパ節郭清の手術(肺手術)が予定されていた患者である。同人は、年齢の割にはしっかりしていた。
病棟看護師Y1は、同日午前8時20分ころ、1人で患者A・Bの乗せられた2台のストレッチャーを押し、当該ストレッチャーのアンダーバスケットに入れられた申し送り書類であるカルテとともに、手術室交換ホールに運び込んだ。手術室看護師Y2は、これを受け入れた。看護師Y1は、「イチゲ(第1外科の通称)の、Aさん.Bさんです。」と同時に両名の姓を告げ、患者A・Bを脱衣させて全裸にし、頭に白色半透明帽子を被せた後、看護師Y2に引き渡した。看護師Y2は、患者を区別することができなかったため、名前を確認するつもりで「Aさん……。」と、質問か確認か判然としないような調子で、看護師Ylに声をかけた。「Aさんと……。」と聞き取った看護師Y1は、看護師Y2が先に引き入れる患者がAであると分かっていて、次に引き渡す患者の名前を聞いたものと思い、次に引き渡す患者の名前を伝えるつもりで「Bさん。」と答えた。その結果、患者の取り違えが発生した。
なお、本件では手術室に運ぶ途中、他の看護師らにより、Aに対し「Bさん、寒くないですか。」、Bに対し「Aさん、寒くないですか。」などと声をかけたが、患者A・Bはいずれも自己の名前が間違えられているのに気付かず、返事をしたり、頷くなどしたため、心臓手術が予定されていた患者A対し肺手術が、肺手術が予定されていた患者に対し心臓手術が実施された。
コメント
この事案は、マスコミにも大きく取り上げられた。朝の忙しい時間帯であったことや、看護師間の連携が不十分であったことから、患者取違えに至ったと考えられますが、大学病院においてさえ、医療環境の安全が保障されていないことに大きな衝撃が走った。
しかしながら、この事案では、意図的な隠蔽等の事実はなく、医療不信を決定的にしたのは、次の事案であったのではないでしょうか。

A 某都立病院消毒剤誤注射事件
事案の概要

患者Aは、慢性関節リュウマチ治療のため左中指滑膜切除術を受けた50代の女性である。
看護師Y1は、平成11年2月11日午前8時15分ころ、同病院病棟処置室において、患者A及びその他の患者らに投与する薬剤を準備した。看護師Y1は、患者Aの抗生剤投与後に血液の凝固を防止するために注入するヘパリンナトリウム生理食塩水を準備するに当たり、注射筒部分に黒色マジックで「ヘパ生」と記載された10ml入り無色透明の注射器1本を取り出して処置台の上に置いた。続いて、患者Bに対して使用する消毒液ヒビテングルコネー卜液10mlを吸い取り、この注射器をヘパリンナトリウム生理食塩水入りの注射器と並べて処置台に置いた。その後、黒色マジックで書かれた「へパ生」という記載を確認することなく、消毒液ヒビテングルコネー卜入りの注射器と誤信して、黒マジックで「6 B子様 洗浄用ヒビグル」と手書きしたメモを貼り付け、もう一方の消毒液ヒビテングルコネー卜入りの注射器を抗生剤と共に患者Aの病室に持参した。午前8時30分ころから、抗生剤の点滴を開始すると共に、消毒液ヒビテングルコネー卜入り注射器を床頭台の上に置いた。
看護師Y2は、午前9時ころ、抗生剤の点滴が終了したとの合図を受け、同患者の床頭台に置かれていた注射器をヘパリンナトリウム生理食塩水が入っているものと軽信して、消毒液ヒビテングルコネ一ト液を患者Aに授与した。
結果、患者Aはこれによる急性肺塞栓症による右室不全により死亡した。
なお、この事案では、ただちに警察への届出はなく、遺族より、医療ミスがあったのではないかとの抗議を受けて、患者死亡から11日後に所轄警察への届出を実施したとの経緯がある。
コメント
この事案での刑罰の内容は、以下のとおりです。本件では、ミスをした当核看護師よりも病院長の責任が非常に重くなっていることが注目されます。

A 看護師 … 刑事責任:懲役1年(執行猶予3年)
B 看護師 … 刑事責任:懲役8月(執行猶予3年)
病院長(医師法21条違反、虚偽有印公文書作成、同行使の共謀共同正犯)
… 刑事責任:懲役1年(執行猶予3年)、罰金(2万円)
行政責任:業務停止1年
主治医(医師法21条のみで略式起訴)
… 刑事責任:罰金2万円
行政責任:業務停止3月

蛇足ですが、禁錮と懲役は、いずれも自由刑(自由を制限する刑罰)であるが、その性質は大きく異なる。一般に懲役は破廉恥罪と考えられている。虚偽有印公文書作成・同行使の罪において「禁錮」の選択刑が存在しないことから、禁固刑の余地はなかった事案ですが、虚偽有印公文書(死亡診断書)を作成した担当医において、医師法21条違反の罰金刑のみが選択されていることと比較すると、いかに病院長の責任が重いかが分かります。
この事案では、医療事故による死亡を知りながら、これを隠蔽しようとした病院そのものの体質が問題となったといえます。この事案により、医療現場に対する不信感は一気に加速しました。その後も、某大学病院の心臓手術の際のカルテ改竄が社会的問題になるなど、残念でなりません。

医療関連死を巡る新しい動き

1 診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業

平成17年8月、解剖に基づく正確な死因分析を行い、同様の事例の再発を防止するための方策を専門的・学際的に検討し、広く改善を図ることを目的として、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業が始動しました。モデル事業の概要は、右図のとおりです。モデル事業を行うためには、医療機関から患者遺族に事業説明を行い、患者家族の同意を得ることが要件とされており、患者側の同意が得られない場合には、同手続を利用することはできません。なお、平成17年9月から平成19年3月までに同手続きが利用されたのは、僅か47例に留まります。病院で死亡する患者は、年間80万〜100万人と推測されていることからすると、同手続きが十分に機能していると評価することはでません。
同手続きは医師法21条の異状死体届出制度に変更を加えるものではなく、モデル事業を利用したとしても、医師法21条違反を追及される可能性は残ります。そのため、病院としては、死因不明(業務上過失致死が疑われる)の事案では、所轄警察署への届出を選択せざるを得ないことも、同手続が活用されない要因となっています。

2 診療行為に関連した死亡の原因究明等の在り方に関する試案(第2次試案)

平成19年10月、診療関連死の取扱いに関する厚生労働省の試案がまとめられました。

診療行為に関連した死亡の原因究明等の在り方に関する試案─平成19年10月 厚生労働省─

  1. ①行政機関としての医療事故調査委員会の設置
  2. ②予期しない死亡(診療関連死)
    原因究明と事故原因の分析
  3. ③組織構成:医療従事者、法律関係者、遺族の立場を代表する者
  4. ④届出方法:医療機関からの届出義務化(遺族も可)
    医師法21条と調整(大臣が受理、必要に応じて通報)
  5. ⑤調査結果の裁判利用:民事・刑事・行政処分に活用可能
  6. ⑥公表:調査結果は公表

これは、公募による意見を募り第1次試案に修正を施したものです。第2次試案においては、医師法21条との調整が明記されている点は評価できます。しかしながら、@民事刑事裁判への利用を認める点において、医療事故原因の究明、再発防止よりも法的責任の追及に重きを置いていること、A調査委員会の構成員に遺族を代表する者、法律家を含める点で、医学的判断よりも社会的、法的判断に重きを落きを置いているものといえます。また、届出を奨励するのではなく、ペナルティによる義務化を図る点で、結局は医師法21条が形を変えただけにすぎないとの見方もできます。平成19年12月21日に、自民党医療紛争のあり方検討会にて発表された自民党案では、@医療関係者への責任追及を目的としたものではないこと、A刑事手続への利用は悪質な事例に限定することが示されており、厚生労働省の第2次試案の問題点を修正しようとの意図が見受けられます。
しかし、医療の透明性・信頼性の向上という目的自体は理解できるものの、遺族の立場を代表する者、法律関係者の参加を認める点で、医学的原因究明が可能かという疑念もあります。また、調査結果は公表されることとなっており、民事・刑事事件への利用の道を拓くという懸念も残ります。刑事手続きへの利用は悪質な事例に限定するとの指針が示されたとしても、何をもって悪質なものと評価するかは不明であり、マスコミの煽動等により、本来悪質とは言えない事案までも刑事手続きに利用されるおそれがあります。また、事案究明のためには、関係者に真実を語らせる必要がありますが、刑事事件への利用の可能性を考えれば、黙秘権等の保障が十分といえるかについても検討しなければなりません。

最後に

  死因究明制度の整備に関し、医療従事者側、患者側での総論としての合意は可能ですが、それぞれが真に求めるものの対立があり、双方が満足する制度の構築は極めて困難です。
医療被害にあったと思い込んでいる患者にとっての「真実発見」とは、適切な医療がなされたやむを得ない結果であったとの報告ではなく、「医療ミス」があったことの認定です。これこそが、患者の求める「真実」といっても過言ではありません。当然、真実が判明しただけで理解・納得が得られるわけではなく、賠償や刑事罰を求めることとなります。この点を誤解すると、美辞麗句に欺かれ、医療従事者側にとって更に悪い制度が制定されるという結果にもなりかねません。
医療行為に関連した死亡が刑事罰の対象となっているという点を変えない限り、真の意味で医療従事者の不安を消すことはできません。そのためには、再発防止に向けたシステムの構築も重要ですが、損害「賠償」という従前の取扱いを改め「補償」制度の構築も疎かにしてはならないと考えます。医療により多くの患者が利益を得ている現実、医療行為が身体的侵襲を伴うものであるとの本質に鑑みれば、一刻も早く、補償制度を実現する必栗があります。補償制度が整って初めて法的責任を免除すべきか否かの議論、医療の透明性、再発防止のための活発な議論が可能となるように思われる。
前記の自民党案について、医師会は概ね好意的に受け止めている印象があります。法が妥協の産物である以上、理想のみを掲げるわけにはいきません。医師にとって、あまりにも過酷な現状を改善したいとの欲求があることも十分理解できます。しかしながら、自民党案をもってしても、医療者に福音とはならないでしょう。同制度の運用を慎重に見守りたいと考えます。

以上