事例分析の視点(その1)

例え小さな事故でも、多角的に分析し問題点を明らかにすることで対策がみえてくる!!

事例分析について 事例分析の種類 定量分析 定性分析
2.事例分析について

事例分析は、その事故がなぜ起こったのかを多角的に分析し要因を抽出し、どのようにしたら事故を防止できたのかの対策を導き出し、事故防止対策を実施するために行います。

厚生労働省医政局長通知「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について」(医政発第0330010号,平成19年3月30日)の中に事故報告と事例分析の必要性が明記されています。


厚生労働省医政局長通知「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について」(医政発第0330010号,平成19年3月30日)より

第2医療の安全に関する事項(抜粋)

1 医療の安全を確保するための措置について
(4)当該病院等における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策

  1. あらかじめ定められた手順、事故収集の範囲等に関する規定に従い事例を収集、分析すること。これにより当該病院等における問題点を把握して、当該病院等の組織としての改善策の企画立案及びその実施状況を評価し、当該病院等においてこれらの情報を共有すること。
  2. 重大な事故の発生時には、速やかに管理者へ報告すること。また、改善策については、背景要因及び根本原因を分析し検討された効果的な再発防止策等を含むものであること。

リスク回避のコツ

重大な事故が発生した場合だけでなく、インシデント報告でも必要であれば分析し問題点を把握し、再発予防につなげる事が重要です。

2.事例分析の種類

事例分析は全体の傾向を知るための定量分析と個別事例の問題点を明確にする定性分析の2つに分けられます。

1) 定量分析

インシデント報告などから得た量的データに基づく分析を定量分析と言います。
たとえば、
職種・発生月・発生時間・経験年数・行為別などの視点で分析して

全体の傾向を把握します。

一定期間ごと、内容別などに報告数を集計し、推移や比率を見ることで、

アクシデントやインシデントの発生状況や増減の傾向を把握できます。

また、どの時間帯に多く発生するのか、どの年齢の患者に多く発生するのか、発生場所はどこなのかなどが把握でき

対策立案の基礎資料になります。

ここでは採血の患者間違えのインシデント報告が多い事がわかった場合を考えてみます。
報告書の項目に沿って数値データを比較・検討すると

  1. 患者間違えは午前中に発生している
  2. 病棟での採血よりも外来の採血室で多く発生している
  3. 同姓の患者に多く発生している
  4. 採血の実施時と準備時に発生している

などが明らかになったとしましょう。
このことから対応策を具体的に考えることができます。
また、定量分析を継続的に実施することで、

対策実施前後で発生数の変化がわかり評価の一つの指標になります。

2)定性分析

個別の事例を質的に検討し、問題点を明確にすることを定性分析といいます。
アクシデントやインシデント事例発生後に、問題や事故の要因(潜在的エラーや背景など)を追究するために実施します。
事例分析は「情報収集」→「情報の整理」→「問題事象の特定」→「背景要因の追求」→「改善課題の特定」→「対策の立案・実施・評価」というプロセスで行われます。
「情報収集」→「情報の整理」をきちんと実施することが問題点を特定し背景要因を追及する上でとても重要です。その一つの方法にイベントレビュー・アプローチがあります。
また、「問題事象の特定」→「背景要因の追求」→「改善課題の特定」→「対策の立案・実施・評価」を行うための分析手法として、なぜなぜ分析・SHEL(L)分析・4M4E分析・RCA(VA版)分析・Medical-SAFERなどがあります。〔図1参照〕

【図1:分析方法】 

これらの分析手法を総称して根本要因分析(RCA:Root Cause Analysis)とも呼ぶこともあります。

(1)イベントレビュー・アプローチ
根本要因を明確にするためには、「情報収集」→「情報の整理」が十分にできている事が必要であり、そのための一つの方法です。
これは、「ヒトとの関係」「モノとの関係」「システムとの関係」を時系列に振り返って、情報を収集・整理する方法です。イベントレビュー・アプローチの特徴は、関係者の行動だけでなく環境的な要因ももれなく拾い出しやすいこと。アクシデントやインシデントに関連する事項が時間的・空間的に広がりを持って把握できることにあります。
アクシデント・インシデント報告書やインタビューや現場での確認などから情報収集を行います。
インタビューは当事者、事故が発生した当該部署の人の他に、事故に関係した全ての人々、事故に関係した器具、機材の管理者などを対象に行います。事故を起こしたことを責めるのではなく、再発防止を目的として事実確認を行います。この際どのような心理状況だったかなども聞いてみます。
現場での確認は現場に行き作業空間、物の配置、実際に使用された器具・機材の状況などを確認します。
そして横に時間軸、縦に当事者も含めて関わった人やモノを全て記載した表を作成し、起こった出来事について時系列に沿って、それぞれの場面で関わった人やモノの欄に得られた情報を記載していきます。〔図2参照〕

【図2:イベントレビュー・アプローチシート例】 

リスクマネジャーのための医療安全実践ガイド(東京海上日動メディカルサービス(株)企画部メディカルリスクマネジメント室著、日本看護協会出版会2009) ”112〜113ページにイベントレビューによる効果的な情報収集について記載がありますので参考にしてください。

「情報収集」→「情報の整理」が終わったら何らかの分析手法(なぜなぜ分析・SHEL(L)分析・4M4E分析・RCA(VA版)分析など)を活用して「問題事象の特定」→「背景要因の追求」→「改善課題の特定」→「対策の立案・実施・評価」を実施します。
これらの分析手法のそれぞれの方法については「事例分析の視点(その2)」で解説します。