医療におけるリスクマネジメントの基礎知識

医療上のリスクマネジメントを4つの角度から抑えたい!!

1)日本における医療安全の変遷

1999年1月に横浜市立大学附属病院で、肺と心臓の手術において患者取り違い事故が起こりました。それから1ヵ月後の2月に都立広尾病院で、点滴のルートから本来実施すべきヘパリン生食液と間違えて、消毒液のヒビテングルコネート液を静脈内注射し患者が死亡しました。この2つの事例をきっかけに医療事故報道が急激に増え、国民の医療に対する不安・不信がつのり、深刻な社会問題になりました。

2)厚生労働省の動き

(1)2002年 医療法施行規則の一部改訂

これらの事故を受けて全ての病院、有床診療所に「医療の安全を確保する為の措置」として、

  1. 医療に係る安全管理のための指針の整備、
  2. 医療に係る安全管理のための委員会の開催、
  3. 医療に係る安全管理のための職員研修の実施、
  4. 当該病院等における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策

4項目が義務付けられました。

(2)2007年 第5次医療法改正(医療法第6条の10)

医療法制定以来はじめて医療安全の確保にかかる医療機関の管理者の義務が、
「病院、診療所又は助産所の管理者は、(中略)、医療の安全を確保するための指針の策定、従業者に対する研修の実施、その他、当該病院、診療所又は助産所における医療の安全を確保するための措置を講じなければならない。」
明文化されました。

(3)2007年医療法施行規則(第11条の11)

無床診療所にも医療の安全を確保するための措置として

  1. 医療に係る安全管理のための指針の整備、
  2. 医療に係る安全管理のための委員会の開催、
  3. 医療に係る安全管理のための職員研修の実施、
  4. 当該病院等における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策

4項目が義務付けられました。(厚生労働省医政局長通知「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について」医政発第0330010号,平成19年3月30日より一部抜粋)

3)診療報酬制度上の推移

2006年より、医療安全対策に係る専門の教育を受けた看護師、薬剤師等を医療安全管理者として配置(専従)している場合には、入院初日に50点の加算が算定できることになりました。

医療安全対策加算の算定基準の項目は、

  1. 医療安全管理体制に関する施設基準(専従の医療安全管理者の配置など)
  2. 医療安全管理者の業務
  3. 医療安全管理部門の業務

の整備です。2006年以前は医療安全管理体制が未整備の場合減算とされていました。
2010年の診療報酬改訂では、医療安全対策について、より多くの病院において医療安全対策を推進する観点から要件を緩和した新設の医療安全対策加算に変更されました。医療安全対策加算1(専従の医療安全管理者)85点と、医療安全対策加算2(専任の医療安全管理者)35点です。それぞれ入院初日に加算できます。
今後は、今よりもっと臨床検査技師が医療安全管理者として活躍する施設が増えることでしょう。

4)医療安全管理者について

厚生労働省「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」では、医療機関において
「医療安全管理者とは、各医療機関の管理者から安全管理のために必要な権限の委譲と、人材、予算およびインフラなど必要な資源を付与されて、管理者の指示に基づいて、その業務を行う者とする。」
と位置づけられています。

また、医療安全管理者の業務として

  1. 安全管理体制の構築、
  2. 医療安全に関する職員への教育・研修の実施、
  3. 医療事故を防止するための情報収集・分析・対策立案・フィードバック・評価、
  4. 医療事故への対応、
  5. 安全文化の醸成

が挙げられています。

医療安全管理者は、他の職種と協力してこれらの業務を遂行することが求められます。
現場の医療安全管理者からは、職員への研修の企画実施が難しい、事例分析が難しいという声が聞かれます。そこで、「リスクマネジメントプロセス」「事例分析の考え方」「医療安全に関する職員への教育・研修の企画について」等を順次述べていきます。