国内の臨床検査室で広く共有できる基準範囲の設定に向けて


社団法人日本臨床衛生検査技師会 「臨床検査値の基準範囲設定」事業について


日臨技精度管理調査は3,558施設の参加があり、会員の検査技術の向上、臨床検査データ標準化実現に向けての意思がうかがえます。
一方で、精度管理調査結果からは、多くの項目で測定値にほとんど差がないにもかかわらず、基準範囲が施設間で異なるために、臨床的判断が各医療機関で同じように評価できない問題が指摘されています。
平成19年度より日臨技主導による臨床検査データ標準化を実現するために基幹施設ネットワークを構築し、全国的な標準化を実現するための事業を開始しました。
日臨技では全国の臨床検査データの信頼性保証を目指し、地域の施設まで正確さを伝達できるトレーサビリティ連鎖システムを構築しています。
各都道府県技師会の理解と協力を得、過去2年間の活動により、全国に分布する172基幹施設の測定値は、トレーサビリティ連鎖が確保されていることが確認されました。
また、地域内の施設間・施設内変動の大きも精度管理物質測定値により継続的に検証されてきています。
今年は、これら事業の3年目で集大成の年といえます。
 このように、臨床検査値の標準化は日本臨床検査標準協議会、日本臨床衛生検査技師会の活動により進みつつありますが、基準範囲の共有化は未だ十分な状況にはありません。
そこで、日臨技では本邦において広く共有できる基準範囲の設定に向けて、全国的に大規模なボランティア健常者に協力いただき、信頼性が保証された測定技術により、根拠のある基準範囲を設定し、臨床現場で活用して行くための準備を進めてきました。
正確さが確保された全国の基幹施設による基準範囲の設定は、信頼性の保証されたデータの提供と合わせて、まさしく標準化事業の最終目的とするところです。
検査データの標準化とそれに基づく基準範囲設定の両者が実現することで、臨床検査データが"何時でも、何処でも、同じものさし"を用い、疾病の診断・予防・健康増進に活用され、医療に貢献することができます。
この事業の実現には都道府県技師会および会員のご協力が欠かせません。各都道府県技師会並びに会員諸氏には、本事業の趣旨をご理解いただき健常者ボランティアとして参加いただきたくお願い申し上げます。
正確さが確保された多施設による基準範囲の設定はこれまでも報告されておらず本邦初の試みです。
信頼性のあるエビデンスに基づいた基準範囲を提供する意義は非常に大きいものですが、各都道府県で多数のボランティアを確保することは大変困難なことと予想されます。
そこで、本年度の基幹施設による基準範囲設定に続き、来年は精度保証が認証された施設の健診データを利用しさらに大きな集団を対象とした基準範囲の設定・検証を予定しています。
これら事業に積極的にご参加いただき、是非とも我々臨床検査関係者の手で基準範囲の設定を成し遂げましょう。
基準範囲設定の具体的な手順などに関しては 詳細.PDFファイル1 を参照ください。