Pipette Vol.9 Autumn 2015
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7◆結核の原因菌と罹患率結核は、結核菌(マイコバクテリウム属ツベクローシス)により発症します。肺結核が最も多く、日本は先進国の中では罹患率が高く、人口10万対16・1(新登録結核患者数は約2万人/年)で、米国の約5倍です。その他に結核性髄膜炎、粟粒結核、腎結核など全身の臓器や組織に感染します。なお、結核は「感染症法」の2類感染症(診断した医師は保健所に届出)に指定されています。◆結核は空気感染結核菌は、感染者のくしゃみや咳と一緒に外に放出され、水分が蒸発したあとは、結核菌のみが空中に浮遊して空気感染します。しかし、結核菌が体内に侵入しても、肺の奥まで到達するのはごくわずかです。万一到達したとしても、結核を発病するか否かは、その人の免疫力にかかっています。感染しても多くの場合は無症候性や潜伏感染で、発病するのは10%以下です。また、職場や学校での集団感染事例もしばしば発生しています。◆結核の初期症状結核の初期症状として、2週間以上続く咳や痰(ときに血が混入)、倦怠感、微熱など最初は風邪などと思われがちですが、寝汗や体重減少などを伴うなど、これらの症状が続いた場合は、医療機関を受診しましょう。◆結核の検査結核の診断検査には、X線撮影や胸部CT検査、血液検査および細菌検査などがあります。X線撮影は、病院へ受診した際に医師の判断で実施する場合と、定期健康診断で実施する場合があります。結核菌に感染したか否かの検査として、長年にわたりツベルクリン反応検査が行われてきましたが、現在は血液を検体としたインターフェロンガンマ検査(クォンティフェロンとT-SPOTの2種類)が行われています。また、喀痰や尿から結核菌を検出する細菌検査があります。細菌検査には、塗抹検査(図)、培養検査、そして遺伝子検査があります。◆結核の治療抗結核薬による治療をきちんと継続することが重要です。治療に使われている薬としてリファンプシン、イソニアジド、ストレプトマイシン、エタンブトール、ピラジナミドなどがあり、数剤を同時に服用する併用療法で治療します。なお、ほとんどの薬剤が効かない多剤耐性結核菌が問題となっています。◆結核の予防生後1歳までのBCGワクチン接種により、小児の結核の発症を52~74%程度罹患リスクを減らすことができると報告されています。接触者健診や感染症全般に共通して、マスクの着用や手洗いによる免疫力の維持が有効です。そして、定期健診や医療機関を受診して早期の発見、治療が最も重要となります●法外な輸入関税をふっかけられ、ショパンは「ここでは自然は恵み深いが、人間は詐欺師」と嘆きましたが、サンドの懸命な交渉の末、マヨルカ島ヴァルデモサの修道院内の自室に届いたプレイエルのピアノで、有名な作品28「24の前奏曲」を作りました。●この前奏曲の第15番変ニ長調は、後に「雨だれ」と呼ばれましたが、サンドは第6番ロ短調が島の雨だれを表現するという意見だったとも。聞き比べてみるのも一興です。◆結核の検査図 喀痰の抗酸菌染色(チールネルゼン染色3+)赤く染まっている多数の紐ひものようなものが結核菌

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