Pipette Vol.11 Spring 2016
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8宮島 嗅覚というのは、人それぞれと思っていましたが、認知症の早期診断などに役立ちそうだということですね。嗅覚検査は、平成27年4月から法改正を通じて私たち臨床検査技師の業務に追加されました。この検査の需要に対応する体制ができれば非常にうれしいと思います。認知症予防の近未来浦上 少し前には、われわれ専門医の間でも、認知症予防なんかできるわけがないという考えが主流だったんです。しかし、最近は、そういう雰囲気が少し和らいで、認知症予防はできるんだという雰囲気になってきて、どんどん研究が進んで、いろいろなことがわかってきました。たとえば、睡眠です。睡眠が悪い方はアミロイドβ蛋白が溜まりやすいということですので、睡眠中の脳波をきちんととって、悪い睡眠状態を早く発見して、それを予防につなげていくことも大事になってくるわけです。あるいは、いろいろな生活習慣病がありますが、とくに糖尿病のコントロールが悪い人は、一番、認知症になりやすいというデータも出てきています。このようないろいろな知見が、臨床検査技師の活躍の場を、多々、提供してくれているのではないかと思います。宮島 私ども臨床検査技師も医療人の一員として、認知症予防という大きな課題を自らのこととして考え、ますます真剣に取り組んでいきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。*次回は来日後、日本国籍を取得し、日本を愛する小説家でナチュラリストのC・Wニコルさんが登場します。お楽しみに。プロフィール●鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座・環境保健学分野教授。日本認知症予防学会理事長。所属学会の理事・代議員を多数務める。認知機能検査(「物忘れ相談プログラム」)を開発。アロマやコーヒー成分と認知症の関係にも着目。認知症関係のテレビ出演でも著名。近著に『新版 認知症よい対応・わるい対応』(日本評論社)ほか多数。浦上克哉Urakami Katsuya認知症患者への安心ケア10か条1 相手に安心感を与える家族の一人ひとりが朝晩2回は声をかけてあげる2 普通の人と同じように接する困った病気にかかった困った人としてみない3 プライドを傷つけない人生で培った経験を否定したり誇りを傷つけたりしない4 失敗しても責めない失敗を責めるのでなく「大丈夫」「心配いらない」と不安を取り除く5 叱ったり命令したりしないできないことは家族みんなでそっとフォローしてあげる6 説得はしないしつこく言われて嫌に思った経験だけが心に残ってしまう7 一生懸命教えようとしない物忘れをする病気なので「覚えなさい」は無理な要求8 訴えていることに耳を傾ける幻想や妄想からくる訴えにも否定せずに話を聞いてあげる9 簡潔な言い方を心がけるできるだけ簡単なわかりやすい言い方で1つのことだけを伝える10 一人の人間として尊重する嬉しいことや楽しいこと、悲しいことはきちんと感じている

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