Pipette Vol.13 Autumn
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11◆増え続ける乳がん30~60歳代の日本人女性がかかるがんのトップは乳がんです。女性の12人に1人がかかっており、今後さらに増えていくと予想されます。乳がんに気づくきっかけになる症状には乳房のしこり、痛み、乳頭からの分泌物などがあります。乳がんで命をおとさないためには、早期に発見し、早期に治療することが最も肝要です。◆乳がんとは出産経験がない人、授乳経験がない人、初産年齢が30歳以上の人、初潮年齢が早く、閉経年齢が遅い人、肥満(高タンパク、高脂肪、飲酒)などは、乳がんになる可能性が高い傾向にあります。発生部位で最も多いのが、乳房の中でも乳腺組織が豊富な乳房の上部の外側で、全体の約40~50%がこの外上部に発生するといわれています。乳房の乳腺に発生し、乳管内にとどまる乳がんは非浸潤がんと呼ばれ、乳管壁を破って、周囲組織に進展すると浸潤がんと呼ばれます。◆セルフチェック(自己検診)と乳がん検診乳がんは、身体の表面に近い部分にできるため、観察したり触れたりすることで、自分で見つけることが可能ながんです。毎月1回、指で触れてチェック、鏡の前でチェックして、気になるしこりや変化を見つけたら、すぐに乳腺専門の医療機関で診察を受けましょう。また、住民検診・職域検診・人間ドックなどを受診する機会は多くありますので、年に1回は乳がん検診を受けましょう。◆医療機関での検査と治療しこりの有無や、画像検査ではわかりにくい皮膚の変化、乳頭・乳輪の異常などをあわせて専門医が視触診を行います。さらに必要に応じて上掲表のような検査が有効です。乳がんは、病状・進行度を示す「病期」(ステージ)の数字が小さいほど、早期で治癒率が高くなります。0期やⅠ期であれば90%以上の10年生存率を見込めます。発見が早いほど、治療の選択の幅も広がり、その後の生活や生き方に影響していきます。治療法には、手術や放射線療法などの局所療法と、薬物を用いる全身療法があります。検査でわかった乳がんの病期や、乳がん細胞の遺伝子の特徴で分けるサブタイプなどの分類結果に、しこりの数や位置、がんの種類、悪性度などの病態の要素が加味されて、治療のタイミングや治療法の選択がなされます。●浮世絵師・歌川国芳の「療治図」は、華佗が三国志の英雄・関羽に施した治療風景を示します。●毒に犯された骨を削り取ったあと、塗り薬を用いますが、国芳は牡丹か芍薬の花を背景に描いて、華佗が使用したのは牡丹科の花から抽出された薬であると示唆したのではないか、という考察もあります。◆乳がんの検査マンモグラフィ乳房をエックス線で撮影する検査です。乳房を台に乗せ、透明の板で平たく挟み撮影します。とくに触ってもわからないような小さながんや、石灰化を見つけることができます。乳房超音波検査超音波反響によって乳房の中の構造をモニターで観察することにより、異常の有無を検査します。しこりをつくるタイプの乳がんで、手では感じ取れないきわめて小さなしこりを見つけることができます。乳腺の発達している若い人でも、しこりを発見しやすい検査です。血液検査乳がんの腫瘍マーカーとしては、CA15-3、CEAなどが臨床の現場で用いられています。これら腫瘍マーカーは早期乳がんの診断には陽性率が低く、がん発見のための検査としては有用ではありませんが、化学療法(抗がん剤)などの治療効果の判定には有用なことがあります。その他の検査マンモグラフィや超音波検査の結果で異常な部分があり、乳がんの可能性があるときに、あらゆる角度から乳房の断面図を撮影する乳房MRI(磁気共鳴)検査や、しこりなどの病変部の細胞の一部を採取して、がん細胞か否かを顕微鏡で調べる細胞診、「生検」ともいわれる検査法で、細胞の一部ではなく、さらに広範囲の細胞が構成している組織を取って調べる組織診があります。

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