Pipette Vol.13 Autumn
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2平成の三四郎こと、古賀稔彦さんに柔道を通して人をどのように育てているのかをうかがいました。聞き手 横山 一紀 (済生会横浜市東部病院 臨床検査部副部長) (神奈川県臨床検査技師会 会長)子どもたちの指導編人の役に立ちなさい―私(横山)は専門学校を出て、臨床検査技師の資格を取りました。社会人になってから東海大学の夜間に通っていて、学校の中に小さいんですが柔道場があって、そこで半年間、体育の授業でみっちりとやりました。肋骨を1回折って、柔道には痛い思い出しかないんです(笑)。肋骨や手はけっこう折りやすいんですよ。―先生はオリンピックでご活躍され、バルセロナ五輪では靱帯(じんたい)損傷という大きな怪我をされたにもかかわらず金メダルを取られたというのが、今でも脳裏に焼き付いていて、ヒーローというイメージがあるんです。現在は、古賀塾を運営されながら、子どもの教育もされているのですね。どのようなスタンスで関わられているのでしょうか。私は柔道の現役を終えて、これからの人生を、この柔道とどういう関係で生きていこうかと考えたときに、自分がこの柔道から何を学んだのかと考えました。いろいろありましたが「よかったな」と思うことが多々あったので、それを子どもたちに、強い弱いは関係なく、気軽に足を運べる町道場で伝えていければと思ったのです。その中で一番メインになるのは、柔道をつくられた嘉納治五郎先生の言葉の中にある「精力善用・自他共栄」です。簡単に言いますと、「人として生まれてきたからには、人の役に立ちなさい」という意味合いです。柔道の世界はただ柔道で強くなれというのではないですから、人の役に立てる人間づくりを、柔道を通してやれたらと思って、この塾をつくらせてもらいました。最期の時期から逆算したらでも、本音は、この柔道着の格好で、柔道場の上で死ねたらいいなと思ったんです(笑)。この格好で死ねる場所って、どこにあるのかなと考えたら、まさか人の道場に行って死なせてもらうわけにはいかないですから(笑)、それだったら自分の柔道場があればと。畳敷きで、祭壇もあって、見た感じお葬式もやれそうでしょ(笑)。それで道場をつくって、でも死ぬのはま

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