pipette_vol14_winter_2017
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9現在、「がん」は2人に1人が罹患し、3人に1人が「がん」が原因で亡くなっています。その中でも大腸がんは(結腸がんと直腸がんの総称)近年増加傾向にあり、2014年の疫学調査から女性で1位、男性で3位の死亡率であるという結果が出ていますので、早期に発見し治療をすることが大切です。◆1次スクリーニング検査1次スクリーニング検査として、便潜血検査(便中ヒトヘモグロビン)が実施されます。便潜血検査は、採取された便から大腸を主とした消化管出血の有無を判定し、大腸がんを含めた出血性疾患の可能性を見つけるものです。これはがんの表面は血管が豊富で脆いため、便が通過する際にちょっとした刺激で出血する特徴を利用した検査で痛みを伴わず、食事制限もなく検査できるため、広く簡便に実施できるメリットがあります。大腸がんは他のがんと同様に、進行するまでほとんど自覚症状がありません。早期発見のために自覚症状がなくても、40歳を過ぎたら定期的に大腸がん検診を受けましょう。ただし、この検査で異常がない場合でも大腸がんがないとは言い切れません。大腸がんがあっても、出血が見られない場合もあり、毎年受診することが必要です。便の採取では、採便量が少なすぎたり多すぎたりしないように注意します。適量を便全体からまんべんなく採取してください。しっかり採取したあとは、ヘモグロビンの失活を防ぐため、検体を提出するまで冷蔵保存することをおすすめします。◆2次精密検査大腸がんを疑った場合は、大腸内視鏡検査を実施します。検査前に下剤等で腸内の洗浄を行い食物残渣(食べ物の残りカス)を出し、腸内を見やすくしたあと、肛門から内視鏡を入れ、大腸を観察します。内視鏡検査は大変な検査であるというイメージが大きいようですが、検査を実施することでがんを発見した場合、早期の大腸がんであれば内視鏡で取り除くことができる有用性の高い検査です。1次スクリーニング検査で異常を指摘されたら、必ず2次精密検査を受診してください。◆検査の注意点大腸がんは年々増加している「がん」ですが、中でも近年女性における上行結腸がんが増加しています。便潜血検査の注意点として決まった日数で便が出ないような体質(便秘など)がある場合は、出血部位からのヘモグロビンが失活してしまい、検査結果が陰性になることがあります。早期に大腸がんを発見するためには定期的に検診を受けましょう。大腸がんの代表的な症状として、便秘と下痢(緩い便)を繰り返す、便が鉛筆のように細くなった、お腹にしこりや違和感がある、便に血が混じるなどの症状がある場合には、積極的に医療機関を受診してください。がん検診受診率が低いことも問題です。2013年の男女の受診率は37・9%であり、がん対策推進基本計画の5年以内に受診率50%(胃、肺、大腸は当面40%)の目標を達成できていません。諸外国と比較してもきわめてがん検診受診率が低い状況となっています。さらに1次スクリーニング検査で異常を指摘された約半数近くの精密検査対象者が検査を受診してないことがあります。精密検査を受けていないため、早期に発見できず、がんを進行させてしまう可能性もあります。早期に発見されれば、大腸がんは治りやすいがんです。見つけることを怖がらず、早期に発見し早期治療をめざしましょう。良寛の死因ともされる直腸がんの初期症状としては、下血、つまり肛門部からの出血があります。痔でもよく見られる症状のため、軽く考えて見過ごされることも多いのです。近年、注目されている検査方法としてカメラが内蔵されたカプセルを飲み、腸内を観察するカプセル内視鏡という方法を実施している病院もあります。●文政11年、推定震度7規模の三条地震は家屋全壊一万三千人、死傷五千人ともいわれる災害となりました。良寛は木小屋から歩き出て被災地を目の当たりにして、泣くしかない自分自身を句にしています。  かにかくに止まらぬものは涙なり  人の見る目も忍ばかりに●一方で、知人に「しかし、災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候」と書き送り、また、別の詩では、世の風潮の乱れを嘆きながら「このたびの地震は、遅かったくらいである。……天の戒めだ」(水上勉の意訳)とも書きました。◆大腸がんの検査

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