Pipette Vol.18 Winter 2018
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4人工知能の「感情」―人工知能の「教育」という点では、マイクロソフトのTayなどは、ツイッター上で一般市民が教育するという仕掛けが、虐待とか人種差別的な考え方を教育されて失敗に終わったという事例があります。人工知能には恐怖心がないともいわれます。恐怖心や感情というものを、人工知能に教えることができるかというハードルの高さに加えて、教えること自体がいいことかどうかという2つの問題があって、百科事典何冊分を覚えさせるのは簡単なのですが、うれしいとか怒っているとかいうことを教えたときに、何が起きるのかというのは誰も予想ができないですから、慎重な議論がいるということです。―それでも、ソフトバンクのペッパーなどは人間の感情を理解する能力開発の取り組みをされています。漫画の世界ですが、日本の『鉄腕アトム』『ドラえもん』などは共通する価値観として「頼れる友人」で人間の感情も理解できる人工知能ロボットです。一人の個人が人工知能ロボットを使い続けると、どんどんデータが吸い上げられていって、理解はできないけれども「寄り添う」ことはできるようになると思います。ロボットの反応がすごく優しく感じるとか、快適に感じるという接し方はしてくれる。それを良しとするかどうかは別ですけれども(笑)。所有者のことを理解はしていないが最適なふるまいはできるようになるでしょう。―ペッパーの反応にも親近感を覚えるとかいうことはあるようですね。音声や視覚や触覚の認識という点では、人工知能はセンサーを通じて人間よりはるかにたくさんの情報量を持つことができるので、それに対するふるまいを決めておけば、かなりいいものができる可能性はあると思います。視力7・0とか(笑)。超音波も聞き取ることができるとか(笑)。不気味の谷―アトムの場合は、小学校に入っていって、人間社会の中で成長していくわけで、あえて高い能力を発揮せずに、まず社会に溶け込むという設定になっていましたね。人工知能ロボットが本当に社会に進出するときは、学校を作ってみんなで生活させてちゃんと常識を身に付けさせ、社会の中でふるまえるようにするということはあるでしょうね。大阪大学の石黒浩教授がマツコ・デラックスさんのそっくりロボット『マツコロイド』を作っていますが、「不気味の谷」現象というものがあって、人間に近いロボットができてくると、最初は親近感が沸くのですが、だんだん似てくると突然恐怖になるというのです。これから人工知能ロボットが進んできたときには、必ず、多くの人たちが経験することになると思います。―マダム・タッソーの蝋人形だけでも十分不気味なのですが。そうですね。それでも多少見分けがつくので受け入れられていますが、限りなくわからないほどそっくりになってくると怖くなるのです。欧米と日本で少しとらえ方の違いがあって、アトムは人間に近いけれども、ターミネーターは完全にロボットです。人間的な外見のロボットに欧米は文化的な抵抗があるとも聞いたことがあります。―映画『スター・ウォーズ』に出てくるロボットたちは、人を諭したり駄目出ししたりもしますが、ああいうロボットの形だから欧米でも受け入れられたわけですね。⑤⑥⑦⑤Tay一般ユーザーとの会話から学ぶ人工知能として開発。オンラインチャットボット。18~24歳の女性という設定のTayに、似たような質問に繰り返し答えさせたり、メッセージをオウム返ししたりすることで、ユーザーの好みに合わせてTayをカスタマイズできたり、学習するとジョークを言ったり、受信した画像に沿ったコメントを返したりできる。攻撃的・差別的で人を傷つける発言を学んでしまい、公開後数時間で閉鎖。⑥ペッパー Pepper感情認識型パーソナルロボットとして2015年から一般販売を開始。家族の一員として一緒に生活する家庭向け、オフィスや店頭で働くスタッフとしてのビジネス向け、さまざまな教育現場で活用する学習(教育)向け、ペッパーのロボアプリを作りたい開発者向けと、4つの利用シーンが想定されている。⑦マツコロイド2014年に発表されたアンドロイド。テレビ番組にも出演。

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