Pipette Vol.21 Autumn 2018
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2齋藤先生は、ご専門の教育という分野を広くとらえ、日本語の言語能力やコミュニケーション能力、健康法など、扱うテーマは多岐にわたり、「身体を基盤とした心技体」を持論とされています。病いと向き合う職業という立場からお話をうかがいました。先生がその後の市民公開講演で展開された「コミュニケーション部活動」の様子もご紹介します(6~7ページ)。ゲスト 齋藤 孝(明治大学文学部教授)聞き手 丸田 秀夫(日本臨床衛生検査技師会常務理事)「力」とは身に付けるべき「技」―先生の著書『質問力』を拝読しましたが、インタビュアーとして余計に緊張気味です(笑)。齋藤先生の著書のタイトルや本文内には「○○力」という表現が頻繁に出てきます。あえて「力」と名付ける意図について教えてください。私はもともとスポーツが好きで、何かが技になって身に付くということが大事だと思っているんです。知っている、わかっているというだけでは信用しない。「〇〇力」とすることで、それが「技」となっていますかという問いかけをしたい。意識化すると、その力が向上するわけです。例えば「質問力」と名付ければ、質問を意識するようになるでしょう?―つまり、トレーニングの成果としての「力」だと……。そうですね。いわゆる「部活動」のように、日常のコミュニケーションという行為も捉えたいという思いがあります。暗黒の10年―しかし、先生はご自分の18歳から32歳までの期間を「暗黒の10年」と表現されています。どのように当時の孤独感を乗り越えられたのでしょうか。結局、乗り越えたというよりは、人前で話す機会を得て、自分の霧が晴れたというちくま文庫2006年著書名に見る「○○○力」 『質問力』『段取り力』『コメント力』『雑談力が上がる話し方』『手抜き力』『恋愛力』『教育力』『大人の精神力』『座る力』『仕事力』『年を取るのが楽しくなる教養力』『できる大人の「手抜き力」』『ギリシャ哲学の対話力』『読書力』『ドストエフスキーの人間力』『くすぶる力』『語彙力こそが教養である』『文脈力こそが知性である』など多数。 質の高い質問をつねに相手に発していく厳しさがなければ、「コミュニケーション力」はなかなか上達しない。スポーツや芸事を何となくやっていても進歩しないのと同じである。(『質問力』から)ワニ文庫2018年著書本文に登場する「○○○力」 上機嫌力、断言力、想像力、自分を笑い飛ばす力、自画自賛力、自己肯定力、問題提起力、コミュニケーション力、文脈力、チャレンジ力、仕事の推進力、ディフェンス力、五感力、ポジショニング力、メモ力、引用力、敬語の体力、ハーフタイム力など多数。 手抜きという言葉は否定的な意味合いを持ちますが、あえて「力」を付けることで、ムダを徹底的に減らす「手抜き力」というポジティブな言葉を作ってみました。(『できる大人の「手抜き力」』から)

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