Pipette Vol.21 Autumn 2018
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●グッジョブ・技師のお仕事ゲスト 齋藤 孝5書きで説明してくれたというのは患者さんにも印象がよいと思いますね。あるいは、印刷された説明資料にボールペンで少しプラスするということでもいいと思います。手早くさっとやるというイメージですけれども。―とても有効な方法だと思います。採血は「二人の共同作業」―採血で泣かなかった子供さんに対し、臨床検査技師がかける言葉は、上から目線の「偉かったね」よりは「ありがとう」のほうがよいという、アドラー心理学者のご意見も聞いたことがあります。先生はどうお考えですか。いろいろな声かけがあると思いますね。例えば、「うまくいったね」とか、「すごくうまく採れた!」とか(笑)。「根性あるね!」とか(爆笑)。ほめ言葉を使いましょうというよりは、二人で盛り上がったという感じを出すということでしょうか。こちらが「いつもよりすごくスムーズに採れた!」といい、採血をしてもらう側の患者さんも「いや、今日は全然痛くない!」(笑)。お互いの気持ちが盛り上がるでしょう?黙ってやってもらうのも疲れますし、採血は「二人の共同作業」で、それがすっきり終わったね、という感じです。子供の採血ならば、子供自身は痛いから嫌だし、痛いことをさせなくてはならない検査技師のほうだって嫌なはずだから、二人で我慢して頑張って、終わったらハイタッチして「お疲れ様でした」と(笑)。インタビューを終えてあふれるポジティブ思考に目からうろこが落ちました。難しく悩む前に、明るく問題解決してしまう秘訣は、「人と人はコミュニケーションでつながって生きている」という原点でした。      *次回は、ラグビーの五郎丸歩選手をゲストにお迎えします。前回のラグビーワールドカップ2015で大活躍し、〝五郎丸ポーズ〟でも有名になった五郎丸選手。初めての日本開催となるラグビーワールドカップ2019に向け、ラグビーというスポーツの魅力や観戦上のノウハウを含め、どうぞお楽しみに。齋藤 孝Takashi Saitoプロフィール●1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程等を経て、現在明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。日本語ブームをを作った『声に出して読みたい日本語』(草思社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。著書多数。TV・ラジオ・講演等、多方面で活躍。PHP文庫2015年マッピング・コミュニケーションのポイント1 直角二等辺三角形に座る2 B4の紙と三色ボールペンを用意する3 真ん中から書く4 文章ではなく、キーワードで書く5 自分の言葉も相手の言葉も特定せずメモする6 各人の領土も決めない7 キーワードを線や矢印で結び関係づけていく8 キーワードから次の言葉を連想していく9 制限時間を決める。最初は二十分から三十分くらい10 出てきた言葉の評価をしたり、考えを否定しない※「すごく大事」は赤、「まあ、大事」は青、「主観的に面白い」は緑でメモする 会話というのは、夢中になればなるほど、ご承知のように『さっきのあの話だけど』というふうに、行きつ戻りつしながら進行していく。ところが、頭の中だけで戻るというのは、非常に効率が悪い。 そのとき思考の過程を、地図でも描くように紙の上に置く、つまりマッピングしておけば前の話でも、すぐに相手に提示できる。(『ストレス知らずの対話術』から)

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