Pipette Vol.23 Spring 2019
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●グッジョブ・技師のお仕事ゲスト 荒木 由美子5が出ていたので、私の場合は絶対に言えなかったですね。―仮に告知しても理解できたかどうか。できなかったでしょうね。私たち夫婦も、がんならばお互い告知し合おうという合意をしていますが、認知症の告知については白紙です。息子も交えて考えるしかないでしょうね。生活に大きな変化が出ることですから。―普通に生活をしてこられた方が、自分の認知症を受け入れるのは並大抵ではないと思いますね。介護の悩みを相談できない ―義母さまの介護を一人でされてきて、一番苦痛だったのはどんなことでしょうか。ご近所や親戚の人に隠してしまったことでしょうか。そのため主治医以外は誰にも相談できず、最終的にケースワーカーにご相談したわけですが、夫婦だけでは判断できず、夫が義母の首に手をかけた瞬間に、家族介護のままではもう無理だと。あの時期、私の精神状態から、夫が何日か留守したときに、もしかしたら自分も同じことをやってしまったかもしれないと思うと、ぞっとしました。現在、認知症カフェがどのくらい増えているかですが、患者さん本人を連れていくのに抵抗がない人は、ずいぶん「扉が開いている」人です。連れていけるというのは、普段、暴力をふるったり大声を出したり徘徊したりしないということです。本人も介護している人も、みんなが同じ温度で相談し合える場というのはいいと思うんです。―地域で民生委員を含め、同じ知識を持って取り組むということが必要で、宇和島でもそうですが、診療支援チームとか地域包括ケアの中での取り組みが行われています。 私たち臨床検査技師も、認知症の病態を理解し、早期発見・早期診断や症状の進行を防止するために、最新の検査技術を生かせる検査技師を増やそうと、認定認知症領域検査技師制度を運用しており、人手不足といわれるスクリーニング神経心理学的検査(認知機能検査)を担当できる検査技師育成の講習会事業などにも取り組んでいます(8ページ参照)。こうしたことを通じて、認知症医療や介護のサポートを続けていきたいです。おじいちゃん、おばあちゃんが一番よく行くところは病院でしょう。その病院に通常の診療科とは別に、そういう心の相談窓口を作っていただけたらうれしいし、本人も家族も違和感なく話を聞いていただけるようになると思います。おじいちゃん、おばあちゃんの問題の駆け込み寺というか、今日突然荒々しくなってどうしたらいいかわからないという人もいるので、本当に必要なんですね。大阪では、ご自宅を年中24時間開放して相談に乗っている方がおられて、ご自身も介護でとてもご苦労されたので、そういう活動をされていると聞きました。素晴らしいと思いました。まさに駆け込み寺です。―個人でされているわけですね。少なくとも病院には、そういう不安な気持ちを受け止めてくれる相談窓口機能があるべきだと。人がつながって暮らす 名古屋の地球博(愛知万博)の跡地に大愛媛県宇和島市では、臨床検査技師が公開医療講座の講演依頼を受け、認知症の啓発活動(鑑別診断に生化学検査も必要であることの説明を含めて)を行っている。場所は地域の公民館・認知症カフェなどの施設を利用し、対象者は地域の高齢者または年齢制限なく、認知症に興味がある方としている。

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