Pipette Vol.24 Summer 2019
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3●グッジョブ・技師のお仕事ゲスト 夏井 いつき科とリンクしていける文芸なのです。例えば、俳句の季語の分類の一つである「動物・植物」であれば、理科の観察とまったく同じです。俳句を絵にしてみる、歌にしてみるという試みもあるし、国語の教科書の「ごんぎつね」のお話を俳句に切り取ってみようとか、学校での運動会、遠足、修学旅行もすべて俳句として切り取って、文字で記録を残すこともできます。子どもたちが生活の中でなかなか言えないことを12音でつぶやいて、そして季語を選ぶ。それだけで、先生たちが子どもたちの心の中を理解できるようになる。児童理解、生徒理解が進みます。学校で句会ライブをすると、あんな乱暴な子がこんな小さな悩みを抱えていたんだとか、子ども同士の理解も塗り替えられる。俳句が利用できるとわかると、先生方も上手く使いこなしてくれます。学校の先生が、句会ライブを定期的に主催できるのが理想的です。岐阜県の大垣で先生たちの実技講習を3年計画で取り組むプロジェクトが動き出しました。全国に広げていきたいです。身に付けた先生たちが、後輩の若い先生にも伝えていってくれるのが理想的です。─学校では、課外授業の位置づけで句会ライブが行われるのですか。授業として1時間とらなくても、例えば全校集会とか朝の会の5分間とかでいろいろできます。「日本俳句教育研究会」という組織も立ち上げていて、先生方からの質問とか報告成果を共有できるようホームページで公開しています。日本俳句教育研究会、略してエヌエイチケーケー(笑)。小文字でnhkならいいんじゃないと私が言ったら、研究会会長が「いくら小文字と言ってもそれは恐ろしい」と(笑)。だからnhkkとしました。nhkkが、小学校の学習指導要領で創作が義務づけられるタイミングで生まれたのも、俳句が一番簡単ですべての教科にリンクできる潜在能力を持っているところからの発想です。1億2千万人総俳人化計画─裾野はどのくらい広がったと思いますか。まだまだです。句会ライブだって初めて参加されたという方が多いです。今回も9日くらいの出張ツアーですが、『プレバト!!』の収録をはさんで、6県の会場を回ります。どこも結構、山の中(笑)。句会ライブ参加経験者は、徳島ではゼロ。これだけ種をまいても、地の底から湧き出てくる感じです(笑)。句会ライブは年数十回はやっていますね。1回で100人程度から1500人くらいまでと規模は違いますが。─少なくとも1年で数万人になりますね。今は「1億2千万人総俳人化計画」を掲げています(笑)。万葉集の時代には高貴な方も庶民も、それこそ防さき人もりまでみんなで歌を詠んでいたわけです。日本人には歌を詠むDNAが絶対にあるはずだから、俳句を難しいとかおっかないとか勝手にハードルを上げがちですが、これを打ち砕いていって、眠っている能力を甦よみがえらせたい。もちろん短歌でも詩でもいいのだけれど、17音の俳句はとっかかりやすいのです。みなさんは俳句に季語を入れないといけないから難しいと思われますが、季語のおかげでものすごく楽ちんに詩になるんです。句会ライブではそれを体験してもらいます。俳句と出会うことで、日々の彩いろどりが変わってきます。電車に乗っているときも、待ち合わせで人に待たされているときも、好奇心のアンテナを張る時間に変わってくる。歳時記をめくって季語を知ることが楽しくなる。それまでボーと何気なくテレビで見ていたことも、季語の発見や学びにつながっていく。好奇心をもって出会うことで、新しい学びの世界が開かれていくわけです。─私たち臨床検査技師も臨床検査室という部屋の中で、患者さんの血液や尿といった検体測定をするのですが、その検体にいろいろな情報が詰まっていて、〝検査室は宝の山〟ともいわれます。好奇心をもってアンテナを張っていればいろいろな発見があると、新人技師にも言っています。仕事の場面でもそういうことですから、仕事ではない場面で学びの場があるというのはすばらしいことなんです。松山市には、自治体の運営する公式サイト「俳句ポスト365」があって、無料で投句ができます。世界中から投句され、私もその選者をさせていただいています。先日の俳句の兼けん題だいは、「柏かしわ落おち葉ば」。歳時記によっては夏の季語とするものと、春の季語とする2種類があるので、どうして?とチーム裾野のみなさんは疑問を持ちます。でも、教えてくださいで宮川朱美

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