Pipette vol.27 2020.4 Spring
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 ただ、大学時代は週ごと流される1時間半の授業のビデオを視聴して、毎週、日曜日の23時59分までに、レポートをネット上に提出しなければなりませんでした。午前0時を過ぎるとネットが閉じられてしまいますから。それをクリアするのがすごく大変でした。これはモチベーションというよりは、むしろ自分との闘いでしたね。 仕事が立て込んでくると、時間のやり繰りがうまくいかなくて、授業を見て、まとめて、調べ上げて、提出するといった時間が足りなくなくなって、「ちょっと頭が痛かった」とか、「忙しかった」とか、自分の中でできない理由を考え出してしまうのです。でも、「恩返しがしたい」「人の役に立ちたい」と思って始めたことなのに、そんな簡単な理由でやめるのかって。 ここでそんな自堕落な言い訳をしては駄目だろうと自分に言い聞かせながら、毎回、毎回、初心に立ち返って、23時59分まで闘いを繰り広げていました。モチベーションだけに頼っていたら、この境地には辿り着かなかったと思います。―それはある種使命感に似たようなものでしょうか。使命感というより、自分を弱くしない、自分との闘いですね。アイドル時代はすごく大変で、ゆっくり寝る時間もない、ランチも食べられない、そういう日々を何年も過ごしていたので……。それに比べれば、ちょっとでもお昼寝をする、ご飯を食べる時間もある、そう考えればできないはずはないという感じかもしれません。―アイドル時代の経験が生かされているのですね。 それはあるかもしれないですね(笑)。―大学院博士課程では、予防医学、ロボット工学を選ばれていますが、なぜその分野を選ばれたのですか。 予防医学に関しては、「人の役に立つことがしたい」、「恩返しがしたい」と思ったときからずっと何ができるか考えていました。日本は超高齢社会に突入しています。具合が悪くなったら病院に行けばいいという考え方ではなく、もっと自分自身を大切にして予防していくことが重要ではないかと、漠然とですが思っています。 ロボット工学に関しては、大学3年のゼミを決めるときに、専攻したいと思っていた予防医学の先生が、定年で辞められるということがわかって、途方に暮れていたところ、同級生が「ロボット工学は人気があるし、良いのでは」と勧めてくれたのです。 「ロボット!?」まったく授業も選択していなかったし迷ったのですが、予防医学と融合させることで、何かいい化学反応を起こすことができるのではと思ったのです。そこで初めて予防医学が一緒になっただけで、実は、ロボットに興味があったわけではないのです。―いとうさんのご専門はロコモティブシンドロームということですが、そこに興味を持たれたきっかけはあったのでしょうか? ゼミのクラスに、四国の整形外科医の方がいらして、eスクールのみんなが一堂に会したときに、その先生が、「過疎地ではロコモティブシンドロームが問題になっている。ロボットを使って何かできないかと思い、このゼミに入りました」とおっしゃったのです。 私は予防医学をやりたかったので、ロ大学院では予防医学、ロボット工学を選択3

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