Pipette vol.29 2020.10 Autumn
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The interview子どもの頃に観察をしていたり、追いかけていましたから。それが今の仕事に役に立っているのだとは思います。また、いろいろと地域によって変わりますが、地球全体で考えたときに、やはり生き物の数は減っているなと感じます。 日本は大丈夫かと思っていたのですが、意外と、私が子どもの頃に見てきた景色が変わって、そこに住む生き物たちも変わってきています。その原因を、今後解決するにはどうすればいいのかというのを考えていく中で、学校でも教えてもらえないようなことが、テレビを通して、現状などを皆さんに知っていただき、意識を変えていただくということにはつながっていると感じています。―先生は大学で、生物学を教室でもご講義されておりますが、一番ベースになる研究というのは、どのようなテーマでしょうか。 私の研究テーマは、在来生物の保全です。在来生物というのは、長い地球の歴史の中で、生き物自らの力で動いて、分散拡散しつつ、その土地に適応した自然の状態の分布のものです。今それが、人間が全然違う所に移動し、更にそれらを放してしまうということがあり、できるだけ元に戻したいと思っています。それは、生物の進化を変えないようにということです。生き物を守るというのは、もちろん私たちが今後利用する資源を守るということでもあるのですが、生き物の遺伝子も守ります。それはなぜかというと、生物の進化を妨げないためです。私たちは、生き物を移動できる、遺伝子も変えられる、品種改良もできる、生き物を改変できる力があります。このような動物というのは、人間しかいないです。生物を絶滅させることも、保護することもできるというのは、人間しかできませんから、この地球上に暮らす生物の一つとして、謙虚に、現状を大きく変えないように、上手に生き物と関わろうという、そういった動きの中での研―先生は静岡県のお生まれですけれども、そもそも先生が爬虫類や両生類といった生物へご興味を持たれたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。 元々それほど都会ではない地域ですので、自然豊かで、家の中にいるより友達と外で遊ぶことが多かったです。その中で、いろいろな生き物を見つけたり追いかけたりということはしていました。「生き物を何で見つけられるのですか」とか、「何で捕まえられるのですか」とよく聞かれますが、やはり 爬虫類学者、生態学者として珍獣を求めて世界中を旅され、『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』(テレビ東京)『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)などのテレビ出演、また多くの著書でご高名な加藤英明先生にお聞きしました。先生は外来生物が生態系に及ぼす影響や、絶滅が危惧される野生生物の保護等を研究テーマとされており、特にカメに関するご研究や、保護活動を積極的にされておられます。また、小中高校生への課外授業など本当に精力的にご活躍の場を拡げられておられます。加藤先生のこのような活動から見えてくるもの、さらに今後の地球規模の問題点などお話をうかがいました。幼少期から現在の世界観研究テーマと生物の多様化加藤英明生物の多様性、絶滅危惧生物のはざまで2|Pipette静岡大学教育学部講師新渡戸文化短期大学 教授ゲスト聞き手Guest:加藤 英明 The interview加藤 英明廣井 禎之

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