Pipette vol.29 2020.10 Autumn
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というのも、全く調べられていませんでした。罠を仕掛けると外来種だらけでした。私は、生き物が好きで始めた研究なのですが、取れた外来生物をどうすればいいのか。自分で殺すしかないですよね。保健所では「いや、業務規程外です」。警察では「いや、うちでは扱えません」。結局は私が……(苦笑) 外来生物は殺さなくてはならないので、いっとき、殺すのは別に他の人がやってくれればいいのではないかと思ったこともあったのですが、生き物を保全する人たちはみんなそうなのですね、生き物が好きだから、外来種であっても殺したくないのですね。 これは、私が地道にやっていけば解決するものかどうかと考えたときに、いたちごっこだと思いました。外来生物は、ペットであっても全て人間が持ち込んだものが外来生物、それがいいか悪いかというのは置いておいて、野外に放ったものは取り除かなければならないです。そもそも捨てる人がいれば、もう保護というのは成り立たないわけです。 私がいくら外来種を取り除いても、捨てる人がいたら困るので、メディアの力を借りて、現状は、生き物を捨てないように、最後まできちんと大切に飼ってくださいねというメッセージを出しながら、それで全国各地困っている所に行って、調査をしたりアドバイスをしたり、それがそのままメディアにつながっています。―先生は日本、そして世界をフィールドにして、いろいろな調査をしていらっしゃいますけれども、法律的な問題で苦労があると思うのですが、その辺いかがでしょうか。 なかなか、国として動いている以上、法律があって、いろいろ生き物は管理されているはずなのですけれども、その法律自体を地元の方が知らないことが問題と思います。 それから生き物を守るに当たり、そこに住む方たちがそれなりに豊かな暮らしができないと、生き物を守れないかなと思います。例えば、家族に薬も買えない、病院も行けないとします。でもフェンスの向こう側には、丸々と太ったシマウマがいると。やはり家族を助けるため、違法だと分かっていても入って、捕まえて、食べたり売ったりしてしまうのですよね。 ですから、病院にも行ける、命を大事にしてもらえている国、そこに住んでいるということが分かると、その国の財産である、みんなの財産である野生動物を守ろうという気持ちになるのですよね。ですから、そういった意味では、医療や教育も大事です。―コモド島におけるコモドドラゴンが、世界的に有名なのですけれども、何か経済的な効果があるかとか、そういう観点はいかがでしょうか。 昔は殺していたようです。やはり危険な生き物ですから、出会ったときにはもう人間が攻撃をして、コモドドラゴンを殺したりしていたこともあったようなのですけれども、今は観光資源となり、その生き物を見るために世界中から人が集まります。そこでいろいろお金を使っていただけるということで、地元の方は生き物を守る理由というものがしっかりあるわけですね。自分たちの生活を支えてもらう大事な生き物であるという認識があるので、今は大事にされています。このように、生き物というものが、悪い言い方だと利用価値、存在価値、そこを見いだせれば、大事にされるのかなと思います。何のために守るのかというのを明確に、ということです。 しかし、生き物が絶滅して何が悪いのか、という考えを持つ子どもたちもいるのですね。例えば、ジャイアントパンダが絶滅していなくなっても、自分たちの生活には特に関係ないのではないか、サイやゾウがいなくなっても関係ないのではないかと思われる人たちも多いかもしれないですね。 例えば、私たち人間が連れてきた、犬や猫、環境の変化などの原因で、ニホンカワウコモドドラゴンについて4|PipetteGuest:加藤 英明The interview

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