Pipette vol.30 2021.1 Winter
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歳と8歳でしたから、このような顔では帰れないぞと思ったのです。気持ちを整理するのに2〜3時間は車の中にいて、周囲がうす暗くなってやっと家に帰りました。遠い海外にいた元主人や東京の両親に連絡をして、京大の産婦人科に入院したのが6月の4日だったと思います。―当時は子宮がんには体がんとか頸がんとかステージとか、全然そういう知識がないですよね。ないです。今でこそ、いろいろな先生方、看護師さん、その他多くの医療に関わる方々と一緒に講演会をさせていただいて、自分なりに勉強させていただいていますので、子宮頸がんが今若い人たちに増えていて、いかに発見しやすくて、普通のがんとは成り立ちが違って、早く処置すれば、治療すれば、きちんと赤ちゃんも生める状況で、幸せな一生を送れるということを理解しております。―そうですね、日本の検診受診率は非常に低いですよね。本当に低いですよね。―頸がんの原因はヒトパピローマウイルスの感染が関連されています。仁科さんは2010年に当時の国立がんセンター中央病院長とともに「子宮頸がん予防ワクチン接種の公費助成推進実行委員会」の共同の発起人を務めておられましたね。日本はワクチン全体に対して、割と後ろ向きというか、前向きな国ではないかなという私の印象があるのです。子宮頸がんワクチンも「世界ではこれほどやっているのに」というようなこともありました。日本では2009年12月にやっと認可が下りてましたよね。それは神様からの日本の女の子に対してのクリスマスプレゼントと思うぐらい画期的なことだと思いました。許可が下りたものの公費ではなかったので厚労省に伺いました。それから、ワクチンの製造会社のグラクソ・スミスクラインの会長に会うなどいろいろなことを         させていただきました。ところが、副作用、副反応のことを大きく取り上げられました。もちろん重篤な症状が出られた方には大変申し訳ないと思いながらも、とても多くの女の子たちが確率的には助かります。今はワクチンとの因果関係は、無かったと言われていると思います。―そうですよね。今はもう本当に2人に1人ががんになる時代ですから。そういうところの認識も必要ですね。周りの方に検査を薦めると皆さんがおっしゃるのですよ。「だって検診に行って何かあったら嫌じゃない、怖いじゃない」って…。だから私はそれは本末転倒ではないですか。おかしくないですか。それこそ愚の骨頂というか、なかったらラッキーだけれども、何かあってから行くのではそれは治療で検診ではないですからと申し上げるのですが。―仁科さんは、病気をされてからはもうずっと定期的に全身検査をされているのですか。そうですね。もう月に1回の血液検査です。―月に1回ですか。ちょっと他にもいろいろなことがありますので。定期的にきちんと検査をしています。あとは1年に一度胃カメラや大腸カメラをしています。―胃のほうは、あれは粘膜下腫瘍でしたでしょうか? 脾臓まで取る手術になったというのは。SMTというのですか、粘膜下腫瘍というものも最初調べた時は2センチほどだったのでそれほど大きくないし、ほとんど良性なので心配ないです、経過観察しましょうということでした。それもまた悪い例なのですが、3年ぐらい検査しなかったのです。そうしましたら6センチくらいに急に大きくなっていました。食道と胃のつなぎ目くらいのところですが、6センチぐらいになっていて。―ひどいところにできたのですね。これ以上大きくなると食べ物が通過しなくなるよということで、最初は腫瘍だけ取っていただく予定でした。46歳で仕事に戻ったので、色々とするに当たって検査をしたら見つけていただいて手術になりました。ところが非常に細胞分裂が激しくて。悪性なほど細胞分裂が早いとのことで、結局胃の上部三分の一と、脾臓を切除いたしました。もちろん、4回の手術はそれぞれつらいことがありましたが、胃の手術の後は、その後が食べられなくてつらかったですね。―3分の1を取ってしまわれた。3分の2は残っているのに?4|PipetteGuest:仁科 亜季子The interview

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