Pipette vol.32 2021.7 Summer
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TG(中性脂肪)やChE(コリンエステラーゼにエンドトキシンや酸化ストレスなどの要因が加わることで非アルコール性脂肪肝炎を引き起すことも知られています。さらに線維化が進むと肝硬変、肝臓がんへ移行することもあります。脂肪肝の原因には、①肥満、②糖質の過剰摂取・糖尿病、③アルコール多飲、④高脂血症、⑤高尿酸血症、⑥その他(甲状腺機能亢進症やCush疾患、ステロイド等の薬剤性、妊娠、栄養不良状態、手術後など)があります。多くは無症状で気づかないうちに進行しています。会社の健康診断や血液生化学検査でAST(GOT)やALT(GPT)の値が基準値を超えていたり、腹部超音波検査で肝臓が白く光ったように見えて偶然見つけられることが多いです。脂肪肝では、脂質異常症(主に高トリグリセド血症)、高血圧、高血糖、メタボリック症候群の合併が多いです。また、高血糖(糖尿病予備軍もしくは糖尿病)が高い比率に認められます。脂肪肝の診断は、だいたい超音波検査で行われますが、診断を確定するためには肝生検(かんせいけん)という病理組織診断で決定します。血液生化学検査では、AST(GOT)とALT(GPT)の検査値が正常から軽度上昇です。アルコール性の脂肪肝ではASTが優位で、アルコールが原因でない脂肪肝はALTが優位に高くなります。他にも値を示します。[肝機能検査の基準値の表参照]ng症候群等の内分泌が高腹部超音波検査では、肝臓の輝度がかなり高くなります(白く明るい)。肝臓が腎臓よりも明るく写ります(肝腎コントラストの増大)。また、体表より深い位置にまでエコーが届きにくくなります。一般的に脂肪肝は、原因を取り除くことができれば、予後は良好です。多くは肥満に対する対策が中心となります。肝臓以外で、動脈硬化に由来する疾患(心筋梗塞、脳梗塞、腎の細動脈硬化)や糖尿病が予後に影響します。脂肪肝の治療において、食事療法、運動療法はとても重要です。どちらか一方のみでは効果は不十分です。「これだけ食べればやせる」というものはありません。食物繊維の摂取や、運動との併用が重要です。脂肪肝から肝臓がんへ移行するものがある【脂肪肝とは】脂肪肝は肝臓の細胞に中性脂肪が沈着して、肝機能障害をきたす病気です。アルコールが原因のものと、アルコールが原因でないものとに分類されます。アルコール性の脂肪肝は、アルコール過剰摂取者のアルコール性肝炎・肝線維症・肝硬変などのアルコール性肝障害の初期段階です。逆に、飲酒歴はないのに、アルコール性肝障害に似た脂肪沈着を伴う脂肪性肝障害を総称して、非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)と呼んでいます。脂肪肝は、日本人成人の20%〜40%がかかっており、男性では30歳代後半から増えはじめ、女性は閉経後に増加します。大酒飲みの80%以上で脂肪肝が認められます。わが国では約1000万人存在すると推定されます。脂肪肝の中には、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎や、肝障害を起こすような飲酒歴がなくても脂肪性肝障害を認める場合があります。その場合脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎原因症状臨床検査米化し、過栄養により脂肪肝の人が増えています。特に自覚症状もなく、健康診断などで指摘される方がほとんどです。健康診断等では、受診者の約3割の方に脂肪肝が見つかっており、その比率は年々、増加する傾向にあります。しています。キャビアやトリュフとともに「世界三大珍味」のひとつとされているフォアグラですが、ヒトのフォアグラは頂けません。最近、日本人も食生活が欧多くの日本人の肝臓が急激にフォアグラ化治療①カロリー制限・アルコール制限②脂肪制限③糖質制限④蛋白質制限⑤運動31号 中段「治療」項目5〜7行目に誤りがありました。正しくは下記となります。お詫び申し上げます。(誤)ホスマイシン→(正)ホスホマイシン、(誤)ノロフロキサシン→(正)ノルフロキサシン、(誤)ニューロキノン系→(正)ニューキノロン系10|Pipette       )   i      肝生検HE染色肝臓腎臓AST(GOT)基準値13〜30U/L男性:10〜42 U/L女性: 7〜23 U/L男性:13〜64 U/L女性: 9〜32 U/LALT(GPT)基準値γ-GTP基準値AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)γ-GTP(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)ASTもALTも肝臓の細胞にたくさん含まれている酵素(こうそ)で、アミノ酸をつくるときに必要となります。しかし、何らかの原因で、肝臓細胞がダメージを受けた時には、ASTやALTが血液中に流出するために、これらの血中濃度が上昇します。一般的には、男性の方が女性よりも高い傾向にあり、飲酒や薬物、運動後に値が上昇します。脂肪肝の場合には、一般的にはALTの上昇がASTを上回ることが知られています。γ-GTPもやはりアミノ酸を、つくる時に働きます。肝臓や、腎臓、膵臓に存在します。お酒の飲み過ぎや薬を飲んでいる時などに上昇します。たくさんお酒を飲む人でもγ-GTPが上昇しない人もいるので、前出のASTやALTの値の変化と比較しながら判断します。肝機能検査の基準値の表丸く白く抜けたのが脂肪滴です腎臓と肝臓の明るさの違いを比較します肝腎コントラスト

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