Pipette vol.32 2021.7 Summer
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The interview    考えていたと思います。―私も『血い花』を読ませていただいたのですが、とても歯切れが良くてテンポが良くてすっと読めましたが、特にこだわっておられることとかあるのですか?言葉を選ぶというか、エッセイでは私はわざと「い抜き言葉」や「ら抜き言葉」を使うことが多いです。それにはきちんと意味があって、言葉は変わっていくものだからどういうふうに見せたいか、どういうふうに読んでもらいたいかがとても出ると思います。小説は「うそ」の物語ですから逆に自分が出てしまいますが、コラムは本当の自分を書きます。本当に起こったことや自分を書いていくから、自分が出てしまうと思うのです。「こう見られたい自分」というものは人間だからあると思いますが、両方とも読んでくれる人に対して「うそ」は書いてはいけないのではないかと思っています。―小説もそうですが、連載物も多く抱えていらっしゃいます。何時、お仕事されておられるのでしょうか。集中してお時間をとられているのですか。それとも、仕事の合間のお時間を工夫されておられるのですか?一時、連載を月に60本くらい抱えていたのですが、やはり仕事が粗くなってきているのが分かったので、もっと心を込めて書きたいと考え、今は月に15本に絞っています。これは、2日に1回ぐらい書くのがいいと思ったのですが、現状、週書かれるようになったきっかけがおありでしたら教えてください。私の父親は小説家になりたくてなれなかった人間なのですが、祖父は俳句を書いたりしており、物を書くような家庭でした。当時、新潮などのコンテストに応募をし、入選することをきっかけにデビューしていくということはおぼろげに 小説家、随筆家、と文筆活動以外にもテレビ、ラジオのコメンテーターとしてマルチに活躍する室井佑月さん。歯に衣着せぬ発言は、聞いていて気持ちが良いと共感するファンも多い。体当たりの子育てを赤裸々に描いた著書も多く、同世代女性からも絶大な支持を得ています。一見したところ健康そのものに見える佑月さんですが、命にもかかわりかねない大病を経験されたそうです。膵臓の3分の2と脾臓の摘出手術を受け、さらに糖尿病を発症、今では毎朝の血糖検査とインスリン注射が必須だそうです。また、2019年(令和元年)には、乳癌であることを自ら公表され、右乳房とリンパの一部摘出手術、放射線治療、ホルモン治療を経験されています。今では職場復帰も果たされています。 辛い闘病生活を経ても、なお変わらず元気で活躍されておられる秘訣についてお尋ねしたいと思います。―最初に文筆活動に関わられるようになったきっかけについてお伺いしたいと思います。1997年に『小説新潮』のコンテストで入選されて本格的に文筆活動を始められたと伺っていますが、小説を文筆活動に関わるきっかけ室井佑月生きるって何?2|Pipetteゲスト聞き手作家Guest:室井 佑月The interview室井 佑月宮﨑 直子伊藤病院臨床検査室

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