Pipette vol.33 2021.10 Autumn
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ことになりました。ステージ上のメンバーも2メートルずつ離れて演奏します。誰が感染しても感染しにくい環境を、まず自分たちでつくるということからスタートしました。コンサートでは、音が鳴り始めるとお客さまは、CDやスマートフォンで聞く音楽と全然異質ですので、目で見て、音圧を感じて、コンサートというものを楽しんでいただくと、いっとき、みんな息苦しく生活していたのを一瞬忘れてもらえたと思います。専門医からは「逆にそれで免疫力が上がるんだよ」と言っていただきました。音楽によって感動する力ですとか、それから「来てよかった」と思うことのほうが大事で、免疫力を上げるというのは自分の心の問題なので「これはさださん、やったほうがいいよ」と僕は専門家の皆さんにも言われましたので、勇気を持ってコンサートを行いました。―非常事態宣言とか新型コロナウイルスが感染拡大していく中でのツアーを経験したことで、今回始まる『新自分風土記Ⅲ』も自信を持ってやれるということでしょうか。これはもうお客さまとの信頼関係だけです。僕はお客さまを信頼しているし、お客さまも僕たちのスタッフを信頼してくれていますので、スタッフから感染することはないはずだと思って来てくださっていますし、具合が悪いなという方は、最初から今日はやめようという勇気を持つお客さまが多いのです。―若い世代は、情報伝達のツールとして新聞や雑誌といった活字からの情報ではなく、SNS※1が情報を得る主たる手段であり、テレビやラジオなども使わないようです。そのような世代に向けて、どういう対応をしていけば良いのか、正直判らないことも多いです。さださんはどうお考えになりますか?コミュニケーションがSNS的になってしまうと何が怖いかというと、まっとうな議論ができなくなるのです。相手の意見を聞いて、それを反すうしながら自分の意見と比べて、それで、違っているところを見つけ出す。最近SNSの世界を見ていますと、自分の言いたいことだけを言いっ放しで、相手のことは一切聞きません。しかも匿名なので、ひどい言葉を使っても平気という、これでは見えない所から手を出して殴るような、そういう卑劣な言葉合戦になってしまいかねないですよね。―私はさださんの歌詞とか物語とか本とかを読ませていただいたのですけれども、そのときに、何といっても日本語がとてもきれいで、曲ではなくて歌詞を読むと風情が浮かぶとか、本当にすごいと思います。照れくさいですけれどもうれしいです。(笑)―吉田正美さんと共に、1973年(昭和48年)にグレープでデビューされた後、約半世紀にわたって第一線で活躍されています。そのメロディーは美しく心地よく私どもの耳奥底、脳幹にまで響いてきますが、実は作詞された言葉そのものが私たちファンの心に共鳴し、感動を呼び起こしているのだと思います。日頃、作詞から手掛けられるのか、或いはメロディーが先にできるのでしょうか?いろいろあります。曲によって詞が先行したりすることもありますし、自分が伝えたいものは一体何だろうと、自分で迷いながらギターを弾いているうちに、ギターのサウンドから引っ張られていって、そのサウンドが言葉を呼び出すこともあります。また、呼び出された言葉が、一体なぜこの言葉を自分が選んだのだろうと自分と対話することで全体のテーマが見えてくるという、逆のこともあります。メロディーだけliYouTube、Twitter、ne、Instagramなどの音楽・文筆活動に関わるきっかけ        3※1. SNS=ソーシャルネットワークサービスの略。コミュニケーションを目的とした登録制のオンラインサービス

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