Pipette vol.36 2022.7 Summer
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2低蛋白血症による血液膠質(こうしつ)浸透圧の低下3ナトリウムの貯留4リンパ管障害(リンパ管の閉塞)1基本的検査2鑑別するのに必要な検査AlbCrCrまぶたが重い、手足がだるい、はれぼったい、物が握りにくい、靴がはけない、急激な体重増加などの自覚症状。出現しやすい部位は、下腿、足背、眼瞼(がんけん)、背部、後頭部などです。浮腫は以下の症状などによって起こります。1 血管内圧の上昇うっ血性心不全(毛細血管の静脈圧上昇)、心臓の調子が悪かったり、静脈がつまるようなことがあると、血液が心臓に戻りにくくなります。そうなると全身の静脈に血液が溜まってしまい、静脈の内圧が高くなります。その結果、組織・細胞から血管へと水分を移動させる力が弱まって、組織内に水が溜まった状態になります(炎症(胸膜炎、腹膜炎)→胸水、腹水)。ン※が減り、組織から血液に水を移動させる力が蛋白質の摂取量が減少しても、血液中のアルブミ弱まって、組織に水分が溜まってしまいます(低蛋白血症…ネフローゼ、低栄養、肝硬変)。※アルブミンは主に肝臓で作られる蛋白質血液中の水分やナトリウムは、腎臓の糸球体という組織で濾過されて、その一部が尿細管というところで再び吸収された後、尿とともに体外に出ていきます。もし、この糸球体の濾過する機能に急性糸球体腎炎などの病気によって障害が起こったり、ナトリウムや水の再吸収が増えたりすると、体内の水分やナトリウムが尿中に出ていかなくなり、結果として血液量が増えて血管内圧が上昇し、浮腫が起こります。組織内の水分の一部はリンパ液としてリンパ管に吸収されています。リンパの流れが何かの理由で悪くなると、リンパ管への水の吸収が減少して組織に水分が溜まって、浮腫が発生します。例えば、乳がんの手術で転移を防ぐために腋の下のリンパ節を摘出すると、摘出した側の腕と手に浮腫が起こることがあります。子宮がんでそけい部のリンパ節を摘出したときにも下肢に浮腫が起こったりします。これらをリンパ性浮腫と呼びます(乳がんの術後、フィラリア感染(象皮病)→リンパ管浮腫)。②TP ①尿検査・・・・・・・蛋白、糖、潜血、沈査②生化学検査・・・AST ③血液検査・・・・・血球数算定検査(血算)④胸部X線①1日尿蛋白⑤心エコー・ドプラ法⑥その他特殊検査浮腫の原因は様々ありますが、一晩寝たら治ってしまうような一過性のものであれば問題ありません。しかし、むくみがなかなか治らないで、動悸・息切れ・体重の増減が激しい・尿の量が減る・食欲不振・極度の疲労などの症状むくみがしばらく続くようであればかかりつけ医に相談しがある人の中には重い病気が潜んでいることもあります。てください。むくみの原因を知って、生活習慣を改めれば予防するこ    l()とも可能です。長時間同じ姿勢でいること、立ち仕事が多いこと、きつめの服、窮屈な靴もむくみの原因となります。また、水分の摂り過ぎ、塩分の摂り過ぎも原因になります。食事制限をして無理なダイエットをしている人も、体内の水分調節に必要不可欠な栄養素の摂取量が減ってしまい、むくみの原因となります。睡眠不足や睡眠前の飲酒、運動不足、ストレスなども、むくみの原因となります。生活習慣を整えると予防することができます。また、女性は体の構造上、男性よりもむくみが起こりやすく、同様に、太っている人もむくみやすいといわれています。腎疾患ネフローゼ症候群、腎不全、急性糸球体腎炎肝硬変および心不全を検索する手掛かりとします。病歴と身体所見から、浮腫の背景となっている基礎疾患の鑑別に必要な検査を行います。基礎疾患としては、ネフローゼ症候群、腎不全、肝硬変、心不全、特発性浮腫、薬剤性浮腫などがあります。ALT TP Ab UN 浮腫(ふしゅ)浮腫の治療・予防症状浮腫の原因浮腫の指標となる検査 浮腫は「むくみ」ともいいます。皮膚や皮膚の下に水分が溜まった状態のことです。 血液中の水分が、血管の外に異常に浸(し)み出し、浸み出た水分が細胞内に溜まって腫れてしまう状態です。足や、すねなどを指で押さえるとその痕(あと)がなかなか元に戻らないような状態をいいます。浮腫は、ほとんどの場合は一時的なものですが、心臓や腎臓などの機能が低下していることで生じることもあるので注意が必要です。10|Pipette検 査③④肝UN 炎ウイルスマーカー(HBe抗原、HBc抗体)表皮水分浸透圧毛細血管静水圧組織液浮腫の成り立ち浮腫 下肢エコー血漿

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