Pipette vol.37 2022.10 Autumn
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中に出てくるキャラクターで、モデルが実在する人は、ほんの数人しかいません。それ以外の人は、人間の面白いところを組み合わせてつくったり、全然違うキャラクターを恵さんが創造してくれたりというパターンがあります。例えると、空手の組手をしているようで、僕がパンチを出したら、漫画家さんがそれをサッとかわしてカウンターを打ってくるというようなイメージでしょうかね。―漫画制作の場合、チームでの活動ということになると思うのですが、キャラクターを集めてくるのは誰がされるのですか?僕自身、あちらこちらに取材に行って、いろいろな人にお会いします。例えば、医師や、病理技師、中央検査室の技師さんなどでしょうか。また、ケースワーカーさんやコーディネーターさんなどの中にも、いろいろなタイプの人がいます。そういう人たちに会って、この人はどのような人だろうと考えるのは、結構楽しいですし、取材によってキャラクター集めをしているといっても良いかもしれません。―漫画の原作となるネタというのは、どういうところから仕入れるのですか? 持ち込み企画などというのもありますか?ネタは自分が「面白い」と思えば何でも書くのですが、病理をテーマに書こうと思ったのは、病理という存在がよく見えなかったからです。見えないから、「この人たちは何をやっているのだろう?」というところから入っていきました。患者として病院で会う人は、医師や看護師さんの印象が強いと思います。しかしながらそれ以外にも、医療技術職、清掃スタッフ、事務員さんなど様々な職種の方が働いていますよね。僕は、「これは誰がやってくれたのだろう?」というようなことがたくさんあって、その中の一つが病理でした。それで病理を勉強してみようと思い、いろいろ調べ始めました。「この人はどのような人なのだろう」ということを考えるようなアプローチで病理医を探っていくと、診断においてとても大事な、その核となる部分の仕事をされているのですが、患者からは一切見えないということに、ある種のシンパシーを持ちました。世の中にはスポットライトが当たって、とても明るく見えている人だけではなくて、その裏側にもいろいろなことをやっている人がいて、しかもみんなコツコツやっているのです。いろいろな仕事がそうかと思うのですが、漫画作家として自分にしか見えない切り口や角度が見えたときに、これは「自分がやらなければいけない仕事なのではないか?」と思うような瞬間があります。なぜなら、患者側からは見えないですが、「この人がいるから医療が成り立っている!」というところに、僕が小さな懐中電灯を当てられるのは、「それを知っている人しか当てられない」と思っています。―原作を書いていく中で、「これは売れるな」という「ネタ」で書かれるのか「売れないだろうな」と思っても、自身で描きたいと思えば作品として形にされるのでしょうか?外科医や救急医などは、ビジュアル的にも派手な動きがあると思います。患者が病院にやって来るときには、救急車が登場し、原作ネタの仕入れ先   3

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