Pipette vol.37 2022.10 Autumn
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院内スタッフが目まぐるしく動き、「先生っ」という感じですよね。とても絵になりやすいので分かりやすいですが、一方では絵にならないところにも仕事の面白さのようなものはあります。僕は、それをどう切り出すか? というようなことが、「売れる」作品につながるのかと思っています。―草水さんは、最初から漫画の原作者としての道を歩まれたのでしょうか? それとも紆余曲折があったのでしょうか?実は20年くらい会社に勤めながら書いていました。すると書いているうちに楽しくなったことと、漫画の仕事は、自分として「本気でやらなければいけないのかな?」と思うようになり、現在に至っています。 ―決して最初から順風満帆とはいかなかったとは思うのですが、実際いかがでしたか?     いつも苦労の連続で、楽にいくことはありませんでした。でも、取材を受けてくださった先生には何か恩返しをしなければいけないと思っています。しかし、自分がやっている仕事が、本当に恩返しになっているのかな? でも一番のと敵は不、安慣にれなとる退こ屈とでもすあ。り慣まれすて。『フラジャイル』についてしまうと、新しいことをする「気力」がどんどん失せていくのです。そうなると今度は、自分の仕事がどんどんつまらないものに思えてきてしまったりしますので、この仕事は日々七転八起だと思います。なかなかスラスラと書けないものなので、僕は常に、取材と勉強の繰り返しの道のりだったかなと思います(笑)。また、医療の中での病気や治療の話というのは、読者は詳しくなくて当然だと思います。『フラジャイル』を書き始めるときに考えていることは、中学生が読んでも100%分かる漫画にするか? むと大まかなことは理解できるが、細部は読者が興味あったら、自分で調べられるぐらいの感じにするか? たのです。中学生にも分かる話とすると、単行本3巻ぐらいで終わっていたと思います。そんなに掘り下げては書けません。僕は、結局人間を書きたいのです。お医者さんも技師さんも、どのような人がどのようなプライドを持ってどんなふうに頑張っているのか? というところを切り取りたい! 大人が読二択で、すごく迷っと思っており、それを書くためには、やはり少し難しいところも逃げないで書かなければならないので、自分自身もたくさん勉強しなくてはいけないと思っています。―フラジャイルの語源についてお聞きしても宜しいでしょうか?「フラジャイル」は、訳すと、「取り扱い注意」という感じの日本語になります。病院内では、様々な人たちがいろいろなことを考えて、何百人の組織の中で、そこに患者さんが1人入って行き、検査・治療をするという場所だと思います。ここで、プロセスの何か一つを間違ったら正確な診断や治療はできないですよね。例えば、血液検査をして、検査の精度管理がうまくいっていなくて、とんでもない値が出てしまっても補正されなかったとか、逆に、異常値が出たときに、何のアラートも載せずに主治医に報告され、それをスルーされてしまうなど… を撮影して、その結果、明らかな腫瘍があるのに「今日は調子が悪くて見過ごしてしまった」というようなこと、看護師さん同士の業務引き継ぎがうまくできず、患者さんの病態が正確に引き継がれないなど… 一つ不具合があるだけでもうまくいかないですよね。でも、みんなでフォローし、間また、X線CT漫画家へのきっかけ4|PipetteGuest:草水 敏The interview

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