Pipette vol.37 2022.10 Autumn
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    5違いなくやっていこうとしているところが病院業務だと思うのです。「フラジャイル」というのはそういう意味で、みんなで、本当に壊れやすいものを丁寧に扱っているという意味のつもりですが、読者の皆さんにも伝わっているといいなと思います。―取材を進められていく中でイメージが膨らんでいくとは思いますが、草水先生の場合、事例に忠実に掘り起こしていく感じなのか? イメージを強調したストーリーに仕上げられていかれるのか? あるいは全く異なるのか? いかがでしょうか?基本的に考え方は同じで、書こうと思っている人間の気持ちや関係性など、テーマがあります。それに必要な取材をして、合致したときに、ストーリーを書き始めることができます。また、一話では書き切れないので、もっとたくさんの話数が必要だなと思ったらどんどん書いていきます。漫画なので、楽しく読んでほしいし、笑うところは笑ってほしいので、シリーズ内で適宜「こういう人はいい」とか、「こういうことでみんな苦しんでいる」などの感じ方をいかに伝えていくかというところで膨らませたり、切り取ったりしています。例えば野球の漫画で、ピッチャーが一球投げるだけで20ページを使う漫画などもありますよね。また、喧嘩のシーンで、パンチを繰り出す瞬間に過去のことを回想して、ハッと気が付いたらまだパンチは届いていなかったというようなことがあります。漫画というのは、「時間の芸術」だと思っています(笑)。―登場人物の中で、森井久志(もりいひさし)が臨床検査技師として登場していますが、草水さん自身は、彼も含めて臨床検査技師に対してどういうイメージをお持ちでしょうか?第一に本当のプロフェッショナルの仕事というのは、素人が見ても分からないです。一般人にはさっぱり分からないぐらいプロの仕事だと思います。臨床検査技師という仕事のイメージだけで言うと、患者さんから見て「血液の検査をしてくれる人」というイメージなのかなと思いますが、実は血液検査以外にも心電図など様々な検査を受け持ち、専門技術を持ちながら病院の中のいろいろな場所で働く専門技術集団、まさに「プロフェッショナル」ですよね。『鬼滅の刃』で言ったら刀鍛冶の一族のような(笑)。最近は、技師さんの仕事の幅が広がり過ぎてしまって、これから大変ですよね。―そうですね。もともと日本に遺伝子関連の検査を施行しているところが少なかったので、今回の新型コロナウイルス感染症がきっかけで日本全国の病院でPCR検査をしなければいけないということで、新たに測定装置を導入したり検査手技を習いに行ったりなどと、すごく大変でした。―今後、どういった人たちをターゲットに、どんな活動をされていくのか具体的にございますか?『フラジャイル』は病理医2人と、臨床検査技師1人が主要人物の話です。現在、2人の病理医が、どのような道を進んでいくのかということを書いています。その次に、技師の森井君がどういう道を行くのかということでは悩んでいます(笑)。森井君は今後のストーリーにて、どのような仕事をしたいのかとか、病院の中でどのようなポジションに立ちたいのか、誰と一緒に仕事をしたいのか、ということを選べる立場です。これから技師さんの仕事が変わり始めている時期であり、逆に選択肢が増えて難しくなってしまったと思っているところです。しかしながら、病院の中で働いている人が、どのような気持ちで、どのようなプライドを持ってやっているのかということを書くのは変わりません。そこに病を患い、治したい、治してほしいと思っている患者さんに対して、病院の中にいる人々が、どう関わっていくのか…ストーリーのイメージ臨床検査技師への思い『フラジャイル』の今後

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