Pipette vol.43 2024.4 Spring
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―全盛期の頃、現役時代、私は間違いなく槙原さんが球界ナンバーワンの剛速球投手だったと記憶しています。槙原さんから見て、当時の槙原さんよりも速い投手だと思われた選手はいたでしょうか?当時はスピードガンもない時代だったので、「この球場はやたらスピードが出る!」というイメージで投げていた時代でしたから、分からないですね。多分他の選手たちも、それほど意識していなかったと思います(笑)。―よくスピードを言う時に、ボールがホップするようなイメージがありますが、他にそのような投手はいましたか?それはやはり江川さんです。球速はあまり出ていませんでしたが、バッターがどん 今回は、元読売ジャイアンツ投手槙原寛己さんをお迎えしました。 1994年には平成唯一の完全試合を達成しました。永く巨人の先発の要として活躍し、引退後は野球解説の他にバラエティ番組にも数多く出演され、お茶の間での好感度も高く、幅広い年齢層から人気を集められています。お話上手な槙原さんに元気をいっぱいいただきたいと思います。進化する投球術 iThentervewどんボールの下を空振りするわけです。手元でぐっとくるような感覚が非常にあったピッチャーでした。―今活躍中の大谷投手(ドジャース)や、佐々木投手(ロッテ)は、MAX165キロのストレートを投げるような時代になってきました。現役の頃の槙原さんと比べて、何処がどう進化しているのでしょうか?彼らは、ピンチになった時だけ力を入れるのです。それは高校時代に覚えたのだと思います。結局、全部を全力でいく必要は全くありませんから。今の若いピッチャーたちもある程度力を入れていますが、力を抜くことを覚えていくと長く現役で活躍できると思います。私も25歳を過ぎたぐらいからそういうことも考えて投げないと完投できないなと思いました。大谷選手も、最近あまりスピードに意識がなくなっていますし、変化球も多いですよね。そういう時代になってくると思います。―最近150キロ超え160キロの速球を投げるピッチャーが増えてきたことは、それなりに技術や身体的な進歩があるのでしょうか?両方だと思います。一番は、「何をやったら球速につながるか」というトレーニングのやり方が、非常に明確化されてきたことです。走れとかウエートトレーニングではなく、どこを鍛えてどのように使ったらいいか、柔軟性がどれだけ大事か、ある程度数値的なものが明確化されてくると、選手たちはそれに向かって練習を行います。今までは漠然として確立されていなかったことが大きいと思います。最近は、YouTubeなどでも練習方法が、数値化されて公開されていますし、いろいろな人たちのトレーニング方法などを見ると、私たちの時代と全然違います。基礎的な部分がかなり変わってきますし、ここ10年ぐらいでそれが確立されて、最近の投手の球速アップにつながっていると思います。また、日本のピッチャーマウンドは昔と比べて硬くなりました。私たちの時はマウンドが緩いので力が逃げますが、今のマウンドは、そのまま受け止めてしっかり体が回転できます。そのためには、股関節の内転筋など、どこを鍛えるかということが分槙原寛己剛速球投手の昔と今2|PipetteThe interview聖マリアンナ医科大学病院病理診断科ゲスト聞き手Guest:槙原 寛己      i 槙原 寛己プロ野球解説者島田 直樹

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