Pipette vol.44 2024.7 Summer
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さったのも、とても幸運でした。―私たちも患者さんに掛ける言葉は本当に大事だなということが、改めて身に染みました。ご病気をされる前と後では、何か変化されましたか? もちろん健康面での心構えとかは変わられたとは思いますが、働き方や価値観、楽曲に込める想いなどはいかがでしょうか?体は今でも元通りではないので、前よりも疲れやすい感じがします。去年も、体調がとてもいい状態になってきたと思ったら帯状疱疹になってしまったりしました。張り切ると、そういうふうに何か体調を崩してしまうので、昔は120%で頑張っていたものを最近は102%ぐらいにしようかなって思ったりしています。(笑)また、楽曲に込める想いについてですが、時間は有限だということを感じました。ですから楽曲に込める想いは、遠い未来よりも今ここにいられることを感謝をするような感じになってます。病気になった時、もっと美味しいものを食べておけば良かった、楽しいことを楽しいと感じておけば良かったとか、母や娘にも感謝の言葉を掛けておけば良かったって思いました。そういうことも踏まえて、「今を大事にしよう!」ということですから、何かを悟ったということは全然ないです。(笑)今年の7月に移植をしてから丸5年なのですが、無事に迎えられるといいなという感じです。私自身、当初は5年を迎えられるとは全く思っていなかったので、「もうじき迎えられるかも!」みたいな感じです。―お願いがあるのですが。今まさに病気に立ち向かい闘っている方々や忍び寄る病気の恐怖に怯えている方々に何か勇気を与えるメッセージをいただけないでしょうか?忍び寄る病の恐怖というより、今、何ができるか、今日を過ごせるという喜びのほうを感じてほしいなって思っています。まさに病気に立ち向かい闘っている方々は、自分が闘っている時に他人から何か言われても、また、「頑張って!」と言われても難しいですよね。私自身、先のことは何も考えられませんでした。「頑張って」と言われると「もう十分頑張っています」と言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、でも、私は周りの皆さんが自分に「頑張って」っていう言葉を掛けてもらえるのがとても嬉しかったので、本当に全ての方が病気に勝てるわけではないかもしれないですけど、自分を信じてあげてください。私自身、自分の病気の時は自分に言い聞かせました。思い起こせば、1回目の非寛解の時に、ちょっとボーッとして、抗がん剤治療の時もアルバムが出るタイミングと重なり、仕事のことで頭がいっぱいで、ほんとうは笑って、睡眠もしっかりとるべきだったと思いますが、その時は治療に集中できず眉間にシワを寄せている感じで、とてもたいへんでした。抗がん剤での治療の時は、何日目に白血球が減ってとか、グラフを頭に入れたり、今頑張らなきゃいけない時期とか、そういう時になるべく笑おうと思ったり。「自分が治すんだ!」という気持ちを持つことによって、医療スタッフの治療のみでなく、自分も治しているというつもりでした。2回目の抗がん剤治療の時、私、ゲームがちょっと好きだったりするので、外国の男の子がインベーダ―と戦うつもりで、抗がん剤治療の時に、頭にそれを浮かべながら抗がん剤を打ったら治ったみたいな話を聞いて、私も戦いました。白血病の悪い細胞のことを芽球っていいますよね、「芽球」って嫌な言葉ですよね。その芽球が中にいっぱい、いい芽を悪い芽に変えてしまいそうになっているのを、広い草原の上を自分が飛びながら悪い芽を刈るイメージを毎晩頭に浮かべながら想像していました。ばかみたいですけど、そういうふうに気持ちを持っていったりとかして良い結果になったので、今でも無駄ではなかったのかなと思ったりもします。―今、診断を待っている人たちは、これからどうなるか、どうやって心を持っていけばいいか、きっと分からないので、そんなイメージを持って闘っていたという経験のお話っていうのは、これから治療に入られる方とか診断を待っている方には、私もっていう共感が持てる話だと思います。結果論で言えるだけと言われてしまうかもしれないですけど、ちゃんと乗り越えら       5

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