本研究の目的

本研究では、医師業務負担軽減のあるべき姿を広い視野から考察すると同時に、標準型クリニカルパスシステム(ePath)、医師行動識別アプリ、問診支援システムなどのICTを用いて、データに基づいた医師の業務負担軽減の実証を行う。業務削減されなかった業務に対しては、他職種へのタスクシフト/シェアあるいはICTへの置換の実証試験を行い、医師の業務負担軽減全体の医療への影響、つまり医療の質や安全性に関しての影響や、他職種の業務への影響(看護師の業務量、検査技師の病棟業務の拡大)について検証する。
3年間で実施する本研究の最終目的は、それらの成果を合わせて医師の業務削減に関するガイドライン案を策定することである。

研究課題
標準化クリニカルパスに基づく、医師行動識別センサや問診AIなどのICTを用いた医師の業務負担軽減手法に関する研究
課題番号
(2IAC1002)
研究年度
令和3(2021)年度から令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
中島 直樹(国立大学法人九州大学大学病院)
研究分担者(所属機関)
中尾 浩一(済生会熊本病院)
岡田 美保子(一般社団法人医療データ活用基盤整備機構)
羽藤 慎二(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター)消化器外科)
杉田 匡聡(NTT東日本関東病院 産婦人科)
若田 好史(独立行政法人国立病院機構九州医療センター 医療情報管理センター)
井上 創造(九州工業大学大学院生命体工学研究科)
筒井 裕之(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
的場 哲哉(九州大学病院 循環器内科)
佐藤 寿彦(株式会社プレシジョン)
山下 貴範(九州大学 病院 メディカル・インフォメーションセンター)
平田 明恵(国立大学法人九州大学 大学病院)
奥井 佑(九州大学 病院)
野原 康伸(熊本大学大学院先端科学研究部)
横地 常広(一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会)
井口 健(大阪医科薬科大学 情報企画管理部)
内海 健(九州大学大学院医学研究院 保健学部門 検査技術科)
松本 晃太郎(久留米大学 バイオ統計センター)

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日臨技の役員等が関係し実施した内容

<令和3年度>
病棟(特に循環器)に臨床検査技師が常勤配置されることの効果について

医師の業務負担軽減を目的として、看護師、臨床検査技師などの医療関係職種へのタスクシフトの議論がされている。
本研究の初年度となる令和3年度は、ePath を活用することにより、看護師以外の医療関係職種へタスク・シフト/シェアする活用法を構築するため、循環器領域で業務移管の可能範囲が多いと考えられる臨床検査技師をパイロットとし、パス上とePath以外で実施される臨床検査関連業務の解析に着手した。
業務の特定、実施回数などの抽出のうえ、電子カルテ、レセプト情報、看護記録システムなど診療データベース(DWH)とデータテーブルの紐づけを実施し、循環器病棟に常勤配置される臨床検査技師の病棟内業務量について、詳細な解析する基盤を整えた。

研究分担者:横地 常広(令和2・3年度代表理事副会長)

<令和4年度>
病棟(特に循環器)に臨床検査技師が常勤配置されることの効果について

令和4年度は、前年に構築した基盤情報をもとに、病棟内で移管された業務の研修を経た臨床検査技師を常時1名病棟配置し、医師の業務負担軽減量について効果検証のためのデータ取りを実施した。加えて、実地検証前後において医師・看護師を対象に医療業務負担感に対する意識調査の実施とともに、病棟内における臨床検査関連のインシデントレポートの収集を行った。
効果検証では、行動識別センサを用いた詳細な行動記録をデータとして確保することができるとともに、病棟内実施業務記録簿を作成するに至った。
また、意識調査により医師・看護師が求める移管業務や実施のメリットが明確化した。

研究分担者:横地 常広(令和4・5年度病棟業務検証WG委員長)

<令和5年度>
病棟(特に循環器)に臨床検査技師が常勤配置されることの効果について

令和5年度は、前年に収集した情報をもとに、医療機関(循環器病棟)に臨床検査技師が常駐することで移管可能な業務について、病棟内の医師、看護師などの医療業務削減の指針策定に資する課の視点で検証結果を取りまとめた。
病棟内の医師、看護師に実施した医療業務負担感に対するアンケート調査結果、臨床検査技師(パイロットスタディ)病棟配置の業務量把握、病棟内インシデント解析などにより、医師の働き方改革を推進するために、他の医療関連職種の果たす役割への大きな期待が示された。
医師の労働環境の改善策として、医療機関で活用が進められている「疾患別パス」は、非常に有用であると考える。パス上に登録されたタスクについて、医療の質を担保した上で、優先度が低いタスクなどについては、タスクリデュース(削減)の概念を保持し、単にタスクを他の医療関連職種に移管するのではなく、タスク内容を検証し、優先度が高く、かつ法が許容する業務について、各医療機関の実情に合わせて、他の医療関連職種に移管可能な医療業務をタスクシフトするなど、病院の医療従事者全体のリモデリングを行うことが重要である。

研究分担者:横地 常広(R4-5病棟業務検証WG委員長)

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