衛生検査所等の適切な登録基準の確立のための研究
本研究の目的
わが国の医療機関(衛生検査所を含む)における検体検査の精度の全般的な向上のために、平成29年6月に医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)が公布され、平成30年12月に施行された。
医療法等の一部を改正する法律では、精度管理に係わる責任者の設置および各種標準作業書・作業日誌・台帳の作成が義務化された他、検体検査に関する内部精度管理および外部精度管理調査や研修が努力義務とされた。
検査室の第三者認定、とくに国際的な認定においては、それなりの取得・維持の経費が必要となるものの、医療機関に関しては診療報酬の中で国際標準検査管理加算として評価されているが、衛生検査所においては該当するものがない。
令和2年度厚生労働科学研究事業「検体検査の精度の確保等による研究」の報告書では、第三者認証・認定の取得には人員、時間、資金面において大きな負担があり、資金面でのインセンティブが必要と指摘されている。また、外部精度管理調査を受検できる検査項目は、一般的で実施頻度が高い項目に限定される。
その他の項目、とくに遺伝子関連・染色体検査に関しては、現在、日臨技の精度管理調査とCAPサーベイのみしか存在していないため、小規模な衛生検査所においては受検していない。衛生検査所の規模や有する機能などは多種多様であり、検査技術の進歩に登録基準が合っていない衛生検査所もみられる。
衛生検査所においては、法令改正により負担増加となるが、検体検査の精度の向上、医療経済への貢献の両立という観点から衛生検査所等の適切な登録基準等についての研究を目的とする。
- 研究課題:
- 衛生検査所等の適切な登録基準の確立のための研究
- 課題番号:
- 23IA1002
- 研究年度:
- 令和5(2023)年度
- 研究代表者(所属機関):
- 〆谷 直人(国際医療福祉大学熱海病院 臨床検査科)
- 研究分担者(所属機関):
- 宮地 勇人(新渡戸文化短期大学 臨床検査学科)
山田 俊幸(自治医科大学 医学部)
菊池 春人(済生会横浜市東部病院 臨床検査科)
- 研究協力者:
- 江澤 和彦(日本医師会)
村上 正巳(日本臨床検査振興協議会 / 群馬大学大学院医学系研究科)
長沢 光章(日本臨床衛生検査技師会 / 国際医療福祉大学大学院)
五十嵐 清子(医療関連サービス振興会 / 東京保健会病体生理研究所)
下田 勝二(日本適合性認定協会)
関 顯(日本臨床検査標準協議会 / 東海大学医学部基礎診断学系臨床検査学)
萩原 三千男(日本医療検査科学会 / 日本衛生検査所協会、株式会社エスアールエル)
堤 政好(日本衛生検査所協会)
小林 修一(日本衛生検査所協会 / 株式会社ビー・エム・エル)
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日臨技の役員等が関係し実施した内容
衛生検査所の現状を踏まえた教育制度の整備に向けた具体的な課題と対策を示し、実践的な改善策を提案した。
具体的には、衛生検査所における臨床検査技師の教育の現状と課題を明らかにし、適切な教育制度の整備を目指すことを目的とし、衛生検査所に所属する臨床検査技師や従事者の卒後教育を強化し、臨床検査技師の職能意識の向上と国民の健康増進を図ることを目指した。
調査の結果、衛生検査所における教育機会は施設の規模によって大きく異なることが明らかにとなり、特に小規模施設においては受講者数が少なく、教育の機会提供に課題があることが確認された。また、日本臨床検査専門学院の受講者数では中規模施設に多いことがわかり、特定の分野における教育の必要性が浮き彫りとなった。
このことから、今後は小規模施設に対する教育支援を強化する必要がある。具体的方法としては、関連学会への参加や生涯教育通信講座の活用が推奨され、さらには、ウェブ会議システムを利用した講義形式の導入により、地理的制約を克服し、多くの技師が教育を受けられる環境を整備することが重要である。
これら取り組みを通じて臨床検査技師の教育向上を図るこことにより、検査技術の発展と国民の健康増進に寄与することが期待される。
研究協力者:長沢 光章(令和4・5年度代表理事副会長)