本研究の目的

臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師については、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(令和3年5月28日公布)により、医療関係職種の業務範囲の見直しが行われ、20の行為(診療放射線技師6、臨床検査技師8、臨床工学技士6)が実施可能になった。
また令和3年9月30日付で医政局長通知が発出され、現行制度下でタスクシフトが可能な行為が示された。
業務範囲に追加された行為を行うとするときは、あらかじめ厚生労働大臣が指定する研修会を受けなければならない。
今後、各施設で医師の業務の他職種へのタスクシフトが進む上で、安全なタスクシフト推進が不可欠である。このため、本研究では、先駆的にタスクシフトを実施している施設の実施状況を確認し、安全性の検証を行い、その中でも、好事例の施設における成功の要因となる方策について明らかにし、それを普及させることを目的に調査・研究を実施することとした。

研究課題
臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師のタスクシフテイング/タスクシェアリングの安全性と有効性評価
課題番号
22IA2010
研究年度
令和4(2022)年度から令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
小坂 鎮太郎(公益社団法人地域医療振興協会 地域医療研究所)
研究分担者(所属機関)
青木 拓也(慈恵医科大学 臨床疫学研究室)
北村 聖(公益社団法人地域医療振興協会)
藤谷 茂樹(聖マリアンナ医科大学 医学部救急医学)
青木 郁香 (公益財団法人 医療機器センター)
益田 泰蔵(一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会)
上田 克彦(公益財団法人 日本診療放射線技師会)

本研究に関するすべての公開情報のホームページへのリンクです。

日臨技の役員等が関係し実施する内容

<令和4年度>
手順書等の公開について

2021年に臨床検査技師等に関する法律の法令改正が行われ、臨床検査技師の業務範囲が拡大した。これを機に各施設ではタスク・シフト/シェアを進め、実施している施設も増えてきている。
厚生労働科学研究「臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師のタスクシフティング/タスクシェアリングの安全性と有効性」を実施している小坂班では、先駆的に取り組む好事例施設を検討したところ、手順書を作成し力量評価を行うことで安全に実施されていることが、理由の一つであることが明らかになってきた。
これから導入を検討している施設の参考となることを期待し、好事例施設の了解を得た上で手順書等を公開することとした。
好事例施設を参考としつつ、自施設で手順書等を作成する際に役立てていただきたい。

分担研究者 益田 泰蔵(令和4・5年度常務理事)

<令和5年度>
新規好事例施設の調査について

2022年度研究では、法改正や現行制度下で実施可能な行為を先駆的に実施している好事例施設を調査し、実施体制等を確認し検証を行った。
本年度は、2施設を追加調査し、その有効性や安全性に関連するインシデント及びアクシデントの発生について確認した。実施行為としては、「運動誘発電位検査」「体性感覚誘発電位検査」「造影超音波検査における造影剤の調整と静脈路への接続及び注入」である。
臨床検査技師が一連の行為を実施することにより、医師や看護師の負担軽減や患者の待ち時間の短縮などの効果がみられ、その有効性が確認された。また安全性についてもインシデント及びアクシデントの発生は現時点ではなく行われていた。
また昨年度調査した好事例施設の手順書等を臨床検査技師の職能団体である一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会のホームページに掲載し、これから新たに実施を検討している施設の参考となるように公開した。

分担研究者 益田 泰蔵(令和4・5年度常務理事)

<令和6年度>
好事例施設における追加調査について

2024 年度研究は、これまでの法改正された行為を先駆的に実施している好事例施設に追加 して、他の行為を調査・検証を行った。
実施行為としては、「持続皮下グルコース検査」「内視鏡用生検鉗子を用いて消化管の病変部 位の組織の一部を採取する行為」を2施設に対して調査した。
調査結果として、医師や看護師の負担軽減や患者の待ち時間の短縮などの効果がみられ、そ の有効性が確認された。また安全性についてもインシデント及びアクシデントの増加等も認め られず安全に行われていた。
好事例施設において、タスク・シフト/シェアを進めるために、医師や看護師等の他職種と コミュニケーションを取りながらタスク・シフト/シェアすることが重要であった。

分担研究者 益田 泰蔵(令和6・7年度常務理事)

タスク・シフト/シェアの推進が臨床検査技師業務に及ぼす影響

医療現場における臨床検査技師のタスク・シフト/シェアの現状と課題、そして教育的支援の必要性を明らかにすることを目的として、スコーピングレビューを実施した。
その結果、臨床検査技師が従事するタスク・シフト/シェアの対象は、病理検査補助、内視鏡や超音波検査の介助、採血業務、HIV 検査とカウンセリング、検査室運営支援など多岐にわたり、いずれも医師等の業務負担軽減や処理時間の短縮、患者サービスの向上に寄与していた。一方、制度的な整備の遅れや教育体制の不備が課題として挙げられ、職種間の役割明確化や技能習得支援の仕組みが求められていることが明示化できた。

分担研究者 板橋 匠美(政策調査課 主幹)

心臓カテーテル室におけるタスク・シフト/シェア

心臓カテーテル室におけるタスク・シフト/シェアの現状を把握し、現行の法制度のもとでの運用実態を明らかにするとともに、効果および安全性を評価した。調査の結果、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士など、複数の専門職種においてタスク・シフト/シェアの導入が安全に進んでいることが示された。特に北海道および民間医療機関においては、より積極的な取り組みが確認された。これらの知見は、限られた医療人材を効果的に活用し、チーム医療の質と持続可能性を高める上で重要な示唆を与えるものであり、今後さらなる制度整備と実践的な推進が求められる。

分担研究者 板橋 匠美(政策調査課 主幹)

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